エッセイコーナー
321.朝は必ずくる  2018年8月20日

「かけた情は水に流せ」「受けた恩は石に刻め」
蓋し名言である。

山口県周防大島町で8月12日から行方不明となった2才男児を、みるにみかねて捜索ボランティアに加わり、地元警察や消防士らの必至の捜索にもかかわらず見つからなかった男児を、探し始めて間もなく、無事に見つけ出した人物の座右の銘である。
その人物とは、時の人となった大分県の尾畠春夫さん(78)その人である。
実に深く、重い、妙妙たる言葉ではないだろうか。

尾畠さんは、受けた恩を返したいと東日本大震災や山岳へのボランティア活動を続け、西日本豪雨のボランティアとして現在も汗を流しておられる。御年78歳、実にスゴイ方だ。本当に頭が下がる。
インタビュー中の映像だが、身振り手振りで尾畠さんがコメントする最中、近くに飛んできたトンボが、指が動いているにもかかわらず尾畠さんの小指に止まる場面があった。通常では考え難いことだと思う。
トンボからも愛されているかのようだ。ひょっとしたら、トンボが導いてくれたのかも知れない。

捜索を始めて間もなく、男児を発見できたのは単なる偶然とは思えない。
世の中に恩を返そうと、心底から思い、願い、深い愛情で一心不乱に身体を動かし、汗を流しているからこそ、目に見えない何かが、そうさせたのではないだろうか。私にはそう思えてならない。
私も嘗て、東日本大震災ではボランティアとして泥揚げ作業などで汗を流したが、10回やそこらでやったような気になっていた。
恥じ入るばかりだ。

尾畠さんがボランティア活動の際に被るヘルメットには、「朝は必ず来る」との格言が書いてあるそうだ。
私も「朝は必ず来る」ことをしっかりと胸に刻み、心の糧として、残年のあり方、振る舞い方をじっくりと考えてみたいと思う。


フォト短歌「蜻蛉の眼)  


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