エッセイコーナー
430.防災対策の核心  2019年11月15日

平成時代を語る時、必ずと云っていいほど話題に上るのが自然災害である。
災害発生の度に観測史上「最高の」または「最大の」と云った形容詞が頻繁に使われていた。そのことから平成30年の漢字は「災」と決まった。
新元号「令和」に変わって間もなく、大型台風「ハギビス」などの猛威が日本列島を襲った。そして広範囲に災害を齎した。過去に類を見ない強烈な暴風雨、河川の氾濫により堤防の決壊を余儀なくされ、多くの人命を奪い、床上浸水などにより生活の基盤をことごとく奪われた。

また、今では耳慣れた感のあるゲリラ豪雨。局所的に集中する豪雨のことだが、山渓の上流部や中山間地に雨が集中すると、鉄砲水となって下流域を襲う。
それらは地球温暖化の影響だと多くの専門家が警鐘を鳴らしている。つまりそれも、二酸化炭素を無分別に放出する人災と云うことになる。政策のミスや欠陥による人為的な問題であると云うことになる。
しかしながらそれだけだろうか。

洪水被害と云う観点からみた場合、二酸化炭素の減少に力点を置く温暖化防止策のみならず、農業政策にも注視すべき点があるにではないだろうか。
現在、急速な勢いで中山間地の田畑が休耕田や耕作放棄地となっている。
ひと昔前までは、春になると田んぼに水を引き入れ、お田植えを待つ水田は鏡田となって日中は山容を映し、太陽光の反射がキラキラと輝いては神秘的な光景を放っている。
満月の夜は田毎の月となって見る者の目を楽しませ、心に幻想の観念を呼びおこしてくれる。しかしながら、ただ鏡田の美しさを開放するばかりではない。

山間部や中山間地の水田は雨水や湧き水を蓄え、河川の激流を一時的に緩和させるなど、山地間の水脈の受け皿となるダム湖の役割りを担っている。水田と対をなす溜池や用水路もまた一時的に洪水を抑える役割りを果たしている。
また、耕作放棄地の拡大により、獣害の継続的多発も深刻な問題となって久しい。
日本の水田は中山間地及び平野部の水田を含めると約280万ヘクタール、約60億トンもの水量を溜めることが可能だと云われている。300箇所以上の洪水調整ダムの約4倍の貯水能力があるとも云われている。
また、水田に溜められた水は、涵養により地下水となり、その60%が河川に緩やかに放出されるとも云われている。
そのように、水の反乱、水害対策には中山間地での水田の存続が必要不可欠だと云っても決して過言ではないのだ。

現在、耕作放棄地(主観ベース)は年々増加し、平成27年の内閣府の調査によると、42万3千ヘクタールにも広がっているとのことだ。
全国の農地面積は約449万6千ヘクタール(平成27年調べ)。中山間地はその約4割を占め、179万8千ヘクタールである。農家(専業・兼業含む)数では総農家数の約4割を占めると云われている。
そのうち、42万3千ヘクタール、つまり中山間地の23.5%が既に耕作放棄地となっているのだ。但し、この統計は平成27年の調査によるもの。今から5年も前のデータである。この5年の間で急速に増えていることに疑う余地はない。

高齢化による中山間地農業の疲弊は、後継者不足も相まって、その土地に住む集落の疲弊につながる。
一時期よく聞いた耳障りの決して良くない「限界集落」のレッテルを貼られ、高齢者のみの集落となり、やがてその限界集落も消え、廃村となる。
今後、限界集落の消滅はおよそ2000箇所にのぼるだろうと予測されている。その結果、里山(中山間地)での治水、貯水力は乏しくなり、上流域での大雨などの中間的受け皿が失われることになる。そのことにより、平野部や低地への水の流出は避けられず、堤防の決壊などを余儀なくされると云っても決して過言ではあるまい。
それらの解消は、地球温暖化防止対策と並行して進めるべき国策であり、急務であると云わざるを得ない。

ちょうど2年前にも同じような内容で当サイトやブログ等に掲載し、警鐘を鳴らしたが、災害対策の観点からも、被害が拡大する前に、早急に対策を講じ、実行に移す必要があるのではないだろうか。
経済活動一辺倒の大規模営農の促進にばかり目を向けずに、山間地や中山間地の圃場をしっかりと守り、存続できる政策を早急に検討すべきである。
そのことによって、我々の生命と財産を自然災害から守る、災害対策であり防災対策の一環であると私は思っている。
その対策の具体策として検討すべき点は、現在の日本が抱える食料自給率の低さ、その解消であると確信している。

フォト短歌「渋ぬける」  

今朝、叔父がこの世を去った。92歳であった。
若い頃は教壇に立っていたが、家業の郵便局を継ぎ、局長として60年以上は務めただろうか。詩を書くなど、若い頃から和語に親しみ、短詩を作っては年賀状にいつも載せていたものだ。
現在日本における男性の平均寿命は81.09歳。「大往生を遂げた」と云っていいのではないだろうか。


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