エッセイコーナー
593.ワーキング・プア問題  2021年5月20日

寺島実郎氏と云えば、緊縮財政を是とすると思われる論客だが、そのことを除けば私は寺島氏を尊敬しており、岩波書店の月刊誌『世界』のコラムには極力目を通している。
その寺島氏が、「ワーキング・プア問題/北方領土問題につながる日露近代史」をタイトルに5月16日付けでYouTubeを更新した。
そのなかで、ワーキング・プアについて鋭い指摘があったが、コロナ禍のもとで、格差問題は更に拡大化している。

資本主義の流れは、産業資本主義から金融資本主義、デジタル資本主義へと変遷しており、現実的には格差を益々拡大している。
前出の動画を参考にすると、2020年時点で年収200万円未満で働く雇用者は1,854万人。全雇用者数が5,963万人なのでその約31%を占める。生活保護の受給水準が年間約200万円なので、働き詰めにも係わらず苦しい生活を送っている。
これが現実だが、コロナ禍のもと、今後更に貧困化が進むのは明らかである。
これも緊縮財政による経済政策の失策により、デフレを脱却できずにズルズルと先延ばしにしてきたツケが表面化していると思われる。
そのことは世界に於けるGDPの割合を年代別に比較しても明らかだ。
(1993年当時、日本は17.5%を占め、アメリカは26.4%、日本を除くアジアは5.6%だったものが、27年後の2020年では、日本は6.0%を占め、アメリカは25.0%、日本を除くアジアは25.0%と日本の陰が益々薄くなっている)

一方、アメリカではバイデン政権が巨額の財政出動に踏み切ろうとしている。
日本でも問題となっている「子供の貧困」について、その対策の一環として、約3,900万世帯に対して子供一人当たり3,000ドル~3,600ドル(約32万円〜40万円)の税控除に踏み切る。それによって約500万人の子供が貧困から救われると目されている。更にはその控除を2025年迄続けるよう提案しているとのこと。

最近お茶の間で話題の、資本主義の父と云われる渋沢栄一が、経済道徳合一説を唱え、道徳的であることが最も経済的であると述べたように、道徳的な観点から経済政策に取り組むことによって、格差の是正、ワーキング・プアの問題が解決されるものと期待している。

昨日、自民党の財政再建推進本部で、歳出改革などの在り方について議論が交わされたそうだ。
そのなかで、プライマリーバランス(PB)の黒字化を掲げた議論を展開したそうだが、PBの黒字化などと云うのは民間レベルの発想であり、社会の秩序と安定を維持する為、通貨発行権を有する国とは全く異なる論理である。
出席した一部の自民党議員からは、コロナ禍のもと、「疲弊する現状で緊縮すべきではない」「積極的な財政出動が必要だ」とする賢明な意見が飛び交ったそうだ。
「国を経め民を救う」と云った本来の政治の在り方に、少しずつ戻り、心做しか変わりつつある・・・と期待している。


フォト短歌「明日は我が身か」  



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