エッセイコーナー
342.木は生きている  2018年12月3日

古民家の定義は、築50年以上で伝統的な構法による住宅を指すとのこと。
我が家も、一応は江戸時代末期に、伝統的な構法で建てられた古民家だ。
明治29年6月15日の明治三陸地震、昭和8年3月3日の昭和三陸地震、昭和37年4月30日の宮城県北部地震、平成17年8月16日の岩手宮城内陸地震、そして東日本大震災をもたらした平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震や強烈な余震など、震度6強クラスの強い地震にしっかりと耐え抜いてきた家屋である。
当時の建築職人の技術力は勿論のこと、柱や梁を構成する木材の強さによるところが大きいのではないだろうか。
それも年を重ねることによってますますその強度が増してくるように思える。
確かに、「木は生きている」と云えるのではないだろうか。

そんな木のことを題材とした小説、『古民家再生物語』が先月発刊された。
著者は札幌市在住の森久美子(オペラ歌手の森さんとは「公」と「久」が違う)さん。1995年の朝日新聞北海道支社主催の「らいらっく文学賞」受賞。2002年には第8回ホクレン夢大賞・農業応援部門優秀賞受賞 。農林水産省食料・農業・農村政策審議会前委員であり、現在は臨時委員を務めている。
この小説は古民家情報誌『ジャパトラ』に連載されたもので、中央公論社が出版を決定した。
古民家の再生を手がける9名の職人たちの実話を元に小説化されたもの。一読の価値あり。
なにやら「大賞」の予感がする一冊だ。

昨今、新建材を用いた洋風なデザインが人気を博しているが、日本家屋の良さを後世に残す意味は、家屋と云う「もの」の保存と云う意味のみならず、日本の美や先人たちの知恵、しきたり、或いは地域の文化や風習(本文P161参照)など、目に見えない大切なものを残すと云う意味あいがある。
「もの」を大切にする心、「もったいない」の精神を大切にし、古き良き文化やその精神を後世に残すことは実に尊いことである。
この本を読み進めて、改めて日本の良き文化、尊い精神に触れたような気がする。
我が家も前述したとおり160年あまりの古民家だが、これからも大事にしていきたいと思う。


フォト短歌「古家」  

古民家再生協会


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