エッセイコーナー
119.世界一心の豊かな大統領  2015年2月15日

幸せとは、いったいどんな事をいうのか。どんな時にいうのだろうか。
幸せって、いったいなんなんだ?
資本主義社会、消費主義社会、グローバル社会のなかでもみくちゃにされ、戦戦兢兢、澆季混濁、混沌の現代に自然で当たり前のように生きていると、本当の意味での幸福というものが、どんなものなのか分からなくなっているように思う。
辞書を引くと、「(願いがかなったりして)満足だと感じられるようす」とある。語源を辿れば「めぐり合わせ」の意味を持ち、機会、天運、なりゆき、始末などの意味を持つとのことだ。

幸福論も様々で、平和論への批判を行った保守派の論客、福田恆存翁(故)は「不公正な世の現実を見据え、弱点を弱点と認識した上でとらわれなく生きること。望むものを手に入れるために戦い、敗北しても悔いないこと」だと説いた。
また、古代ギリシア、ストア派の哲学者のエピクテトスは、己の力の及ぶものと及ばないものを識別し、自己抑制をもって生きることを説いている。
即ち、その人それぞれの価値観によって受け取り方も様々だということである。お金さえあれば何でも買える。お金さえあれば好きな事が好きなだけ出来る。好き放題、やり放題だ・・・。

ただ、それが本当に「幸せ」といえるのだろうか。
仮にそうだとして、一部の国や地域、人にお金が集まれば集まるほど、他の国や地域、その他の人にはお金が届かなくなるだろう。自分の国だけ、住んでいる地域だけ、或いは自分さえ良ければそれで良いと思っていることが、本当の幸せなのだろうか。そんななか、世の中には本当に凄い、実に偉い人がいる。

「世界一貧乏な大統領」と言われ、ウルグアイで人気の高いホセ・アルベルト・ムヒカ・コルダノ大統領(79才、愛称エル・ペペ)がいる。アメリカ大統領の年収が約4.200万円(日本円)、日本の総理は約5.000万円、シンガポールの大統領は年に約1億8300万円の収入だそうだが、エル・ペペ大統領の月収は日本円にして約140万円とのことだ。 しかもその給料の90%、個人資産の約80%を福祉施設や政府などに寄附しているというのだ。

暮らしぶりも至って質素。愛車であるポンコツ(失礼)の1987年製フォルクスワーゲン・ビートルに乗り、ホワイトハウスと自宅を行き来しているとのことだが、その車に、アラブの富豪から100万ドル(約1億1600万円)で買い取りたいとの申し出があったそうだ。
しかしながら大統領は、「友人から頂いた物なので、売れば友人を傷つけることになる」と拒否したそうだ。
住居は郊外にあり、決して立派な建物とはいえない。また食卓に上る野菜は、少しばかりの畑で栽培するなど、自給自足の状態で実に質素な暮らしぶりである。服装はというとこれまた実にシンプルで、ネクタイを持たず、勿論高級ブランドのスーツに身を包むなんてこともないそうだ。実に質素で、倹約のお手本とでもいうべき生活を送っておられるのだ。

エル・ペペ大統領が云う
・グローバリゼーションに翻弄されてはだめだ。我々人類がグローバリゼーションをコントロールしなければならない。
・我々人類が、消費社会にコントロールされているが、マーケットを我々人類がコントロールしなければいけない。
・発展は我々の幸福を阻害するものであってはならない。発展は人類に幸福をもたらすものでなければならない。
・環境問題を論議するならば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素である。また、その環境問題は環境危機ではなく 、政治的な危機問題である。

また、その政治的危機問題を解決する為には、金持ち(裕福な人材)が政治に携わってはいけない。何故ならば、人類の大半がマス層ないしアッパーマス層以下の民衆が占め、決して金持ちではないからだ。
金持ちでは、世の中の全体に幸福感をもたらすことは不可能だと云っている。格差是正の為にも。
因みに、エル・ペペ氏が大統領になってからのウルグアイの経済成長率は8.4%(2010年)、7.3%(2011年)、3.7%(2012年)、 4.4%(2013年)と非常に高い。失業率も6.7%前後に落ち着いている。

先人の賢者やエル・ペペ大統領は云う
貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人だと。・・・アラブの春のように、民主主義を唱え、格差社会に拒否反応を示すかのように、里山資本主義やトマ・ピケティの『新・資本論」に大いに関心が高まっている昨今。
行き過ぎた市場経済、グローバリズムの過剰消費主義、格差社会の矛盾に対する懸念を、マス層やアッパーマス層はもとより、富裕層の一部の識者達もが、警鐘を鳴らし始めているのではないだろうか。
因みに、ウルグアイ在留邦人数は362人(2013年:永住者含む)とのこと。

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