エッセイコーナー
319.拘束の末路  2018年8月12日

先日の8月9日、長崎原爆の日に国連事務総長のグレーレス氏が来日し、平和祈念式典(被爆73周年)に出席した。
国連事務総長としては初めての出席らしい。
核保有国を筆頭に世界では1兆7000億ドル(米ドル)、日本円にして約188兆5千億円(2018年8月12日現在)以上となる巨額の資金が軍事費に流れている。この額は世界中の人道援助に必要な資金の80倍に匹敵すると云われている。
この半分、いや10分の1でもいいから人道支援の資金として利用されるのなら、多くの人が救われるに違いないのだが。

広島、長崎の原爆慰霊式典での総理の挨拶は、今年も核廃止論の展開を避け、「核保有国と非保有国との橋渡となり、核兵器のない世界を目指して努力する」のみと差し障りのない答弁にとどめた。
我が国は世界で唯一、被爆した国であり、自然災害?による被曝を経験している国だ。
その国が、2017年7月に採択された核兵器禁止条約交渉に参加しないと云うのは、あまりにもナンセンスではないだろうか。アメリカ、いやトランプへの配慮、忖度、それとも核の冀求なのであろうか。
何れにしても平和に対する思い、願い、平和維持に向けての柔和的な発想はなさそうに思えてならない。

先日、2015年からシリアで囚われの身となったジャーナリストの安田純平氏の、釈放を訴える映像が流れた。
2014年にはジャーナリストの後藤健二氏ら2名が拘束された映像が流されたが、その後処刑されたとみられる。
釈放に向けて、日本政府は何らかの手立て、対策を打ったのだろうか。甚だ疑問に思える。
蛮勇だとして切り捨て、自己責任として突っぱねたのだろうか。

当時、後藤健二さんら2名の拘束が取り沙汰された折、安倍総理は2人の拘束を知りつつも、敢えて、人道支援、非軍事支援として、イスラエルの国旗を背に、イラクやレバノンなどに2億ドル(約200億円)の支援を行ったとする映像が流れた。しかし、残念ながらそのことはIS(当時のイスラム国)への挑発だと云うことを誰もが知っていた。そのことが2人の処刑を早めたことに疑う余地はない。
邦人がテロリストなどの人質となったケースは過去にもあった。

1977年9月、バングラデッシュで151名の邦人が拘束されたが、1週間で全員釈放された。当時の総理は福田赳夫(故)氏だった。1991年3月にはパキスタン早大生3名が拘束され、全員が解放された。当時の総理は海部俊樹氏だった。
2004年4月にはジャーナリストら5名がイラクで拘束されたが、全員無事に釈放された。
当時の総理は小泉純一郎氏だった。
ただ、それ以前にも全て釈放された訳ではない。何名かは犠牲になった者もおり、また、2013年1月の日揮従業員10名全てが殺害されたことは記憶に新しい。また、前出の後藤健二さんら2名、2016年7月のバングラデシュで拘束されたJICA技師ら7名の犠牲は皆、安倍政権下によるものだ。

                     ※過去40年の主な海外での邦人誘拐、拘束事件(毎日新聞社調べ)参照

以下の別表を参照すると、安倍政権下では1人(拘束中の安田純平氏)を除いては全て殺害されている。
テロに屈しないとの強い意志を示しているようだが、果たしてそれが人道的にみてベストなのだろうか。
穏便なる解決策は誰がなんと云っても話し合いによるものだが、果たしてそれをきちんとやっているのだろうか。
確かに、外交も時には強硬な姿勢が必要かと思うが、人質対策のみならず、全てに於いて強硬路線のように思えてならない。強く出れば強く出る程、後々逆に強硬路線の外交政策を受けることは必至である。
「愚かな戦争を二度と起こしてはならない」としっかりと肝に銘じながら、決して口先だけの平和論を展開するのではなく、しっかりと実行に移していただきたいものだと、痛切に願ってやまない。


フォト短歌「灰色」

蛮勇はどっちだ! 
安田さん解放のカギは?なぜ何度も拘束されてもシリアに行ったのか?知人のジャーナリストが語る>>


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