エッセイコーナー
98.見てみぬふり、聞いてきかぬふり  2014年9月12日

とても理解に苦しむ出来事が、随分多くなったように感じる昨今。
埼玉県川越市では全盲の女子高生が後ろからいきなり蹴られたり、大阪ではコンビニで恐喝事件を起こし、自ずからその動画を公開したり、北海道では末期がんの女性を騙してお金を奪おうとする詐欺など、とても常識では考えられないような事件があちこちで起こっている。
事の善悪の判断が付かないのか、それとも理解した上でやるのか、何れにしても呆れてものも言えない。
未解決な事件は、警察の威信をかけて追求して頂き、是非とも犯人逮捕に結びつけてもらいたい。
しかしながら本来ならば、それ以前の問題だ・・・。

「見えないからやってもいいんだ」「どうせ誰にも気付かれないさ」などという愚行は、最低の人間がやることだ。
見えないところでこそ、姿勢を正さなければならないのではないだろうか。
無防備で、か弱い人を虐めるなどは最低最悪の卑怯者だ。
今回の川越での女子高生の事件や、先日さいたま市の全盲男性が飼っている盲導犬が、何者かによって刃物で刺された事件など、社会的弱者に対する卑劣な行為は絶対に許されるものではない。

また、九州電力の川内原発再稼働承認をめぐり、原子力規制委員会が合格通知を出した事に対し、物議を醸している。
原子力規制委員会の記者会見では、どこぞの圧力団体にでも買収されたのではないかと疑いたくなるような、記者団との質疑応答だった。

先日の新聞記事の中で、「海洋流出2兆ベクレルに」といった黒枠で囲まれた大きな見出しが目に飛び込んできた。
ご周知の福島第1原発の放射能物質流出事故の問題だが、事故前の10倍(事故前から流れていたのか?)を超える放射能物質が海に流れ出ているというではないか。
今年5月迄の10ヶ月間に、第1原発の港湾内に出たストロンチウム90とセシウム137が、合わせると2兆ベクレルを上る可能性が高いことが、東電の資料などで分かったとのことだ。
当然、それ以前からもあった筈なので、いったいどれ程の量が流出されたかは見当もつかない。

東電の資料によると、昨年8月から今年5月にかけ、港湾内の1~4号機取水口北側で測定したストロンチウム90とセシウム137の平均濃度を基に試算した1日当たりの流出量は、約48億ベクレルと約20億ベクレル。10ヶ月の総流出はそれぞれ約1兆4600億ベクレルと約6100億ベクレルとの計算となり、それらを合わせると2兆ベクレルを超えることになる。
更に、汚染水には他の放射性物質も含まれ、汚染はより深刻だと指摘している。
何兆と云われても素人の私らにはピンとこないが、何れにしても完璧に流出を防がねば、今後も更に海洋汚染は進み、深刻な状態になるのは自明の理と言わざるを得ない。

国内に48基ある原発のうち、老朽の目安となる運転30年超は現在18基。2013年7月に施行された改正原子炉等規制法では、原発の稼働期間を原則40年に制限(電力会社が希望すれば、大規模な改修工事が必要となるが1回に限り最長20年間延長できる)した。
電力業界には、多額の修繕費がかかる老朽原発の稼働を断念し、廃炉を進めることによって、比較的新しい原発の再稼働の理解が得やすくなるのではないかと考えているようだ。
しかしながら東日本大震災の原発事故、それに伴う損失はあまりにも大きい。経済的損失も去ることながら人的被害や精神的ダメージは計り知れない。

今後も人知を遥かに超えた、想定外の天変地異が起こるとも限らない。いや、必ず起こる。
我々人類や愛犬、そして愛猫のみならずあらゆる生き物にとって、害を及ぼし、厄難を齎す恐ろしい輻射の毒の利用は、絶対に避けるべきではないだろうか。原発の安全神話は完全に崩れているのだ。
『過ちては改むるに憚ること勿れ』
決して「見てみぬふり、聞いてきかぬふり」をしてはならないと、声を大にして云いたい。

また、原発事故当時の東電職員による事故処理の対応をめぐり、解釈の違いによってか各報道機関が異なる情報を流していた 。
その真意を問うべく、当時の福島原発責任者であった故・吉田昌郎元所長による調書が、3年6ヶ月ぶりに漸く公開され、明るみになった。
複数の原発事故は誰しも予測しておらず、パニック状態での対応は目に観えるようだが、あの沈着冷静で秀抜の人物をもってしても、対処はあまりにも困難で、過酷極まりない状況であったことが浮き彫りとなった。
そんな現実を踏まえ、国の電力行政のあり方を根底から見直し、安全でクリーンな社会環境の再構築を、ただただ願うばかりである。





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