エッセイコーナー
332.蜜蜂の話  2018年10月15日

蜜蜂が地球上から姿を消したなら、「人類は僅か4年間しか生存できない」と云った文言を何かで目にしたことがある。
ベルギーの詩人、随筆家のモーリス・メーテルリンクが1901年に出版した『蜜蜂の生活』と云う本から広まったとされる。その蜜蜂が忽然と姿を消す現象が、日本、いや世界各国で確認され、問題視されている。
所謂蜂群崩壊症候群(CCD)である。
日本では「いないいない病」などと呼ばれている。
その原因については、気候変動や遺伝子組み換えによる農作物の普及、或いは農薬、殺虫剤などなど、原因は未だ特定されてはいないようだ。
蜜蜂は蜜を集める為に一日に飛び回る花の数はおよそ3000。我々人類が口にする食べ物の70%が彼らの受粉のおかげであると云われている。

当初の予定では、昨日、一関なのはなプラザにて「みつばちと地球とわたし」の上映会があり、私も行って鑑賞するつもりだった。しかしながら父の体調が思わしくなく、止む無く鑑賞を諦めざるを得なくなった。そんな事情から、どんな内容の映画かをネットで調べてみることにした。
蜜蜂をとおして、我々人類が自然とどう向き合っていくべきかなど、命の尊厳を改めて考えさせる内容のようだ。
主題歌にシンガーソングライターのAsumiさんの「あお」と云う心底に響き、琴線に触れそうな歌声が流れている。

私は現在、農産物検査員としてコメの検査に奔走している。本日も無事に終わり、明日も場所を変えて検査の予定だ。
検査は先月の下旬から始まり、これまで数万袋(抽出検査)を検査しているが、今年は例年になくカメムシ被害による黒斑点米が目立たないようだ。
これまでの検査の中では、ゴマ葉枯病によるであろう未熟粒の茶米や、籾混入によるあら高での落等は多少見受けられたものの、カメムシ被害による落等は1袋もなかった。こんなことはなかなか珍しいことだが、検査をする立場としては決して悪いことではない。
しかしながら、直接の原因は定かでないが、心情的には複雑であることは厳然たる事実である。

何故なら、カメムシの発生が単なる気候云々による減少であるならまだしも、もし、前出の殺虫剤、ネオニコチノイドによる被害粒の減少に繋がっているとなると話は別である。
ネオニコチノイドとは、クロロニコチニル系殺虫剤の総称で、植物体への浸透移行性があり、残効が長く、世界100カ国以上で普及している農薬だ。1990年くらいから使用が急増した。
しかしながらその普及とともに、世界各地で蜜蜂の大量死が報告されている。
この農薬は、神経系の薬で、神経を興奮させ続けることで昆虫を死に至らしめるのだそうだ。即効性はないにしても、後でじわじわと効いてくるといった印象だ。

幸いにも、我が家では過去に一度も使ったことはない。水田の場所、自然環境、地域差もあるようだが、草刈りなどによる日頃の管理が重要だろう。
また、たとえこの農薬を使わなくとも、農業機械の進歩は目覚しいものがあり、カメムシ被害による黒斑点米などの除去は、コンピューター制御の色彩選別機(しきせん)にかけることによって殆ど除去できる。
是非とも、蜜蜂の保護を目指し、延いては人類の存続を願って、懸命な方法を選んでいただきたいものだと、つくづく思う次第である。

追記(10月25日)
蜂崩壊症候群について、近所に住まう元歯科医師で、趣味で養蜂もやっておられる方からご教示を頂戴した。
それによると、ニホンミツバチの減少については、ネオニコチノイドのみならず、アカリンダニの寄生が大きく関わっているのではないかとのご指摘があった。現在、岩手大獣医寄生虫学研究室による調査が進められているとのこと。
蜂崩壊症候群については、近い将来正確な原因究明がなされていくのではないだろうか。

フォト短歌「蜜蜂」  


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