エッセイコーナー
38.名は体を表す  2011年10月8日

被災地の高速道路無料化の本格的被災者支援が実施されてから約4カ月が経った。私も被災者の一人としてこの恩恵を享受している。
無料化になる前は、一関インターから盛岡インターまで2550(普通乗用車)円。往復では5100円と非常に負担が大きかった。したがって無料化の制度は、「非常に助かっている」というのも紛れもない事実である。

しかしながらその有難さの反面、様々な問題点が浮き彫りになってきている。
その例として、被災証明書の偽造、騒音や振動、料金所の渋滞、或いは手軽に高速道路が利用できるとあって、たかだか1区間のみの数キロの道程を、軽トラックに乗ってわざわざ高速道路に入り60km/hののろのろ走行をする。
それに業を煮やすドライバーは、追い越し車線を走行する後続車両の確認をしてかしないか急に右車線に飛び出す。

かたや他県ナンバーの暴走車両はその3倍の猛スピードで疾駆してくる。そんな状態で事故が起きない筈がない。
案の定事故が頻繁に起き、料金所の渋滞以外にも渋滞が起こっているありさまだ。
無料化に伴いこれらの問題が浮き彫りになるなか、ある疑問が過ってくる。
今回の無料化の制度は、東日本大震災の被災者に対する交通の便の解消を目的とすることや、被災地に届ける物資運搬の円滑化が目的だった筈。勿論東北内陸部も一部家屋の倒壊や半壊、ガス、水道、電気などのインフラに損傷をきたした紛れもない被災地である。

しかしながら、沿岸部の津波による被害はことのほか甚大であり、本来であればその甚大な被害を受けた沿岸部の人達を最優先に利用させるべきものだが、殆どの高速道は沿岸部から距離があって殆ど利用していないように思う。
勿論沿岸部にも高速道路はあるにはあるが、現在のところ全線開通はしていない。その為、地震以前から無料解放されていることもあって、津波による甚大な被害を被った沿岸部の被災者が、今回の高速道路無料化の恩恵を然程被っていないというのが現状のようだ。

「それじゃダメだ」と罹災証明書の発行を拒否し、高速道路を利用する際はわざわざ有料のETCを使う人物がいる。
彼は若いながらも非常に礼儀正しく、長幼の序をしっかりと弁え、我欲を抑え、人に尽くす真心を持った度量の広い人物である。
彼は宮城県大崎市築館町で食品加工を営む会社の娘さんと一緒になり、娘さん、つまり奥さんが会社の代表者になってはいるが、その奥さんを陰となり日向となって献身的に支えている人物だ。

私は以前よりそのことを知っているが、若くして、なかなか出来ることではない。
前述の高速道路無料化について色々話を聞いていると、彼の考え方や行動する姿を見て、社員たちも自発的に見習うようになり、料金所での罹災証明書提出を止めるようになったそうだ。
世の中には我欲に溺れ、ただただ儲け主義に走る経営者が多いなか、彼のような経営者の下で働ける従業員も幸せであると同時に、このような会社が繁盛しない世の中であっては決してならないと痛切に思っている。
因みに、彼の下の名は「紀理人(きりひと)」である。

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