エッセイコーナー
374.及川語録  2019年4月16日

生まれ故郷を離れて暮らしてみると、故郷の良さがしみじみと分かるものだが、人もまた同じ。亡くなってみるとその存在感や偉大さに気付かされるものだ。
今年3月10日、東日本大震災から丁度8年目の前日、作家の及川和男先生が多臓器不全で85年の生涯に幕を閉じた。
生前の及川先生の為人や功績など、4月13日から16日迄の地元紙(岩手日日)の社会欄に、「普遍性を持った偉大な作家」として詳しく紹介された。3回に渡り連載されたことは異例であろう。

及川先生の世に出した著書は『村長ありき 沢内村深沢晟雄の生涯』『深き流れとなりて』『森は呼んでいる』『浜人(はんもうど)の森 2011』など五十冊以上に上る。
その殆どが社会的弱者や生命尊重の視点に立ち、温かい眼差しで社会を見つめ、鋭い視線で世の中に訴えかけている、真面目で硬派な作家であった。

なかでも、貧困や多病多死に喘ぐ豪雪地帯の岩手県沢内村を、1歳未満や60歳以上の医療費無料化を実現させ、それまで度々あった乳児の死亡をゼロにするなど、奇蹟の生命行政に尽力した当時の村長深沢晟雄の生涯を描き、後に映画化された1984年初版の『村長ありき 沢内村深沢晟雄の生涯』は多くの読者に共感と感銘を与えた。
また、 2013年初版の『浜人(はんもうど)の森 2011』は、宮古市重茂半島の森を舞台に、津波で両親を亡くした少年の洋人と老木の欅との心の会話を通し、アニマをシュールに描いた児童文学だが、 その印税全てを震災遺児・孤児を支援する「いわての学び希望基金」に寄付されている。

その及川先生から、地元の文化発展を祈願し、平成元(1989)年に立ち上げられた一関・文学の蔵の「手伝いを頼みたい」と持ち掛けられ、震災後に私は世話人会の一員となり、ホームページ及びブログの開設や講演会の運営、年刊誌『ふみくら』の編集に携わることになった。
今年の10月を目処に、『ふみくら3号』を及川先生の功績を称える追悼号として編纂し、また、「及川和男を偲ぶ会」を開催することが先日の世話人会で決まった。

文筆にあたり、生前、及川先生にご教示を仰ぐと、「毎日書くこと、とにかく書くことが肝要だ」と仰っていたことを思い出す。
また、及川先生語録の一つ、「文学とは人生を見つめることだ」との佳言を思い出す。それらのことをしっかりと心に刻み、毎日コツコツと随感を書留め、また、三十一文字文学を通して今後の人生を見つめ直してみたいと思う。


及川和男記事1 及川和男記事2 及川和男記事3


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