エッセイコーナー
25.思い出の店!  2010年8月20日 

漸く異常な暑さも静まってきたようだ。ここ岩手県でも、今夏は今までに経験したこともない程暑かった。
その所為か、パソコンに向っていても、知らず知らずのうちに意識が遠のいてきて、気が付くとキーボードを涎で濡らすなんてことも何度かあった。
到底、思考力も低下してきて、文章を書くなんて作業も億劫になり、暫し遠ざかることと相成った次第であったが、漸く書ける環境になってきたようだ。

毎年、お盆と正月或いは年末の2回、必ずと言っていいほど、奥州市水沢区の焼き鳥屋さん(みちのく道場)に顔を出す事にしているのだが、それも、入り際は何時も緊張の面持ちである。
何故かと言うと、その焼き鳥屋さんの店主(以後、オヤジさんと呼ぶ)は、若い当時は随分と威勢が良かった。
威勢が良いと言っても、その辺にいるチンピラが、ただ「ガンを飛ばす」程度の薄っぺらな威嚇ではなくて、腹の奥底まで響いてくるずっしりとした迫力があった。

ある時、何時もの面々でビールを飲みながら特製の豚タンをつついている最中に、ガラッと、玄関の引き戸を開け、中年風の酔っぱらいが入ってきた。
カウンターの椅子にどっかりと座るなり、「オヤジ、ビールくれ!」
それをカウンター越しに聞いていたオヤジさんは、「なんだこの野郎、お前に飲ませる酒なんぞここにゃ置いてねェ~。帰れ!この野郎…」
鋭い眼光と、ドスの利いた声で捲し立てられた酔っぱらいも、一気に酔いが醒めたか、たじたじの様子だった。
捨て台詞さえ吐く余裕もない緊張感(威圧感)の中、肩を落として帰って行った状況を目の当たりにしたもんだから、30年以上も経った今でも、その残像がフッと脳裏を過る。

故に、入り際は今でも緊張するというのがその理由である。
今では皆、知命の年を過ぎたいい歳の(とある大学の獣医学部教授、とある小学校の副校長)押しも押されぬ社会的立場のオッさん(私のあだ名)連中なのだが、この店に入る時だけは、未だに「蛇に睨まれた蛙」のように、或いは「借りてきた猫」のように大人しくなって静かに杯を交わすのである。
しかしながら、ここのビールは格別に旨い。酒の肴は、焼き鳥(特製だれ)、豚タンの塩焼きの2品(?これ以外知らない)のみだが、兎に角「旨い」。そして何処よりも安いのである。
緊張しつつも暖簾をくぐることが、何十年も変わっていない、この旨いビールと焼き鳥や特製の豚タンに触れる事の悦びを一層引き出してくれるのではないだろうか。

みちのく道場
入店する際の注意事項
1.最初は、頼まなくとも焼き鳥が出てきますがこれは御通しがわり。気にしないように(会計の際に理解出来る)
2.スーツ、ネクタイ姿は止めといた方が無難
3.酔っぱらってから行かないように
4.ジャイアンツの悪口だけは決して言うべからず
5.冬場は焼酎のお湯割りが最高(注意点ではなくおススメ点)
因みに、オヤジさんも既に喜寿(?)近い年齢となり、かなり丸くなってきたように思える。たぶん…
勿論、機嫌がいい時は良い。特にナイター観戦の時などは格別に機嫌が良いようだ。
当然巨人が優勢の時だが…。

※一関市にも、やきとり道場みちのくがある。
 水沢の「みちのく道場」で修行された店主が奥さんと2人で営まれているが、ここも安くて実に美味い。
 特にもつ煮込みは絶品であり、ラーメンも人気がある。
 2階の広間では宴会もでき、店主が腕に縒りを掛けて作る料理を十二分に堪能できる。
 飲み物は、生ビールや焼酎は勿論だが、すが酒(凍らせた日本酒)が絶品だ。ただ、調子に乗って飲み過ぎると後で大 変なので、ほどほどがいい。

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