エッセイコーナー
74.深い穴  2014年3月8日

「深い穴」のことを、フィンランドの現地語ではオンカロと云う。
マイケル・マドセン監督の映画「100,000年後の安全」というドキュメンタリー映画を、遅ればせながらじっくりと鑑賞してみることにした。
100,000年後とはあまりの永さゆえ、なかなかピンとくる数字ではないが、人類に於ける進化の歴史で対比すると、10万年前といえばドイツのフェルトホッファー洞窟で発見されたネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)の時代だろうか。
全く気の遠くなるような時間だが、核のゴミが、人体に害を及ぼさなくなるまでの長い長い時間である。
東日本大震災から後3日で、ちょうど3年目を迎える。

小泉元総理が、「過ちては改むるに憚ること勿れ」と云って、原発ゼロを呼びかける切っ掛けともなった映画だそうだが、ご周知のとおり、フィンランドのオンカロを題材とした映画である。
花崗岩質の硬い頑丈な地層の地下約500mに掘った穴に、核の廃棄物を半永久的に埋葬(閉じ込める)する最終処分の為の、暗く、陰湿で、虚しい人口洞窟である。
予定では最大9000㌧の核のゴミを収容できるとのこと。
東京オリンピックが開催される2020年に操業開始の予定だそうだ。

地元フィンランドでは、現存する原発4基に加え、新たに2基を建設する予定だというが、その僅か6基分のゴミですら、たかが50年程で満杯になるとのことだ。
また、10万年後の、人類の子孫に伝える手段を色々模索しているようだ。
確かに、10万年という途方も無い長い年月、今の言語が使われているという保障は全くない。
「ここには絶対に入るな」「絶対に開けてはダメだ」という注意喚起を、どんな言語で、どんな目印を残すべきか苦慮しているとのことだ。
ネアンデルタール人の伝達方法を、ホモサピエンスである現代人の我々が理解できないのと同じように。
それとも、いっそのこと、全く知らせずに、その存在すらをすっかり忘れ去るといった方法をとるか、など、「不確実性のもとで結論を導き出さなければならない」といった難しさがある。

一方日本はと云うと、オンカロと同じような地層処分を、多重バリアシステムなどによる検討がなされ、経産省所管の原子力発電環境整備機構「NUMO」により、平成40年代後半の操業開始に向けて、その建設地を文献調査・概要調査・精密調査の3段階の調査を行いながら、処分施設の候補地を探している。  
しかしながら日本は、世界でも屈指の地震超大国である。フィンランドのオンカロのように、半永久的に、安全に保管できる場所など存在するのだろうか。
比較的頑丈な地盤といえば、花崗岩質を一帯に持つILC候補地ぐらいのものだが、それとても、山腹が100mも沈下した岩手・宮城内陸地震の直下型地震や、東日本大震災など、未曾有の大災害をもたらした東北地方太平洋沖地震などの巨大地震の直撃を受ければ、10万年もの長い長い気の遠くなるような年月、果たして持ち堪える可能性はあるのだろうか。
甚だ疑問である。
また、前出の原子力発電環境整備機構の役員の顔ぶれもまた気になるところだ。殆どが電力会社の関係者ばかりだ。

そんなことから、今現在の使用済み核燃料は、危険と隣合わせの状態で、地上で保管されているというのが現状だ。
また1993年より、莫大な国家予算を組み、試運転中の六ケ所村の再処理工場に於いても、試運転の度に、技術的トラブルの発生によって20回以上も延期されている。
昨年12月の発表では、今年(2014年)の10月に完成時期を設定してはいるが、これとても延期の可能性大だろう。
当初は、建設費7600億円だったものが、度重なるトラブルにより、2011年2月には2兆1930億円とほぼ3倍に膨らんだとのことだ。

例え仮に完成し、再利用が可能になったとしても、濃縮された高レベルの核のゴミは残る。
そのような現実を横目に、一番の困りものを後回しにして、子孫らに押し付け、生きる上で一番大切な「安全性」を蔑ろにし、「お金だマネーだ」と経済性のみの追求による、不条理で理不尽な政策が今迄は平気でとられてきた。
少数の、利権に絡み甘い汁を吸う者らの為に。
だが残念なことに、今後も更にエスカレートする気配さえ覗える。喉元過ぎればなんとやら~ということだろうなぁ!

今現在、全て停止状態とはいえ、日本には54基の原子炉が現存しており、前出のフィンランドの10倍以上もの高レベル放射性廃棄物を持っているが、オンカロと同等、或いはそれ以上の処分場を10箇所以上も、地震の巣穴である日本列島の何処に造ると云うのだろうか。
つけをドンドン増やすだけ増やし、「後の処理は任せたぞ」とプイッと放り投げ、子孫らに後始末をさせる無責任な政策や政治運営はもう止めるべきだ。


オンカロ
オンカロ日本版


因みに
3日後の3月11日の午後5時半より、一関市役所の噴水前広場を会場に『3月11日追悼 夢あかり一関』が行われる。
<詳細>-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1.日 時  2014年3月11日(火)
      17時30分 夢灯りの点灯
      18時30分 黙祷
      18時46分 「花は咲く」合唱
      19時11分 終了
2.会 場  一関市役所 噴水前広場
3.内 容 「神戸の希望の灯り」から「夢灯り」に分灯し、被災地に手を合わせ、「花は咲く」を歌います。
4.その他  雨天決行。どなたでも参加OK。                        
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------                                              昨年の模様>>

≪return
ブックオフオンライン