エッセイコーナー
73.六文銭  2014年3月3日  

先日、盛岡の叔父が79年の人生に終止符を打った。
病名は元アナウンサーの逸見政孝(故)さんと同じスキルス胃癌だった。
叔父は物腰が柔らかで、誰彼問わず、分け隔てなく接し、思いやりの心を持った優しい人柄であった。
決して怒鳴ったり、上から目線で人をみるような人物ではなかったが、自分に対してだけは厳しく、信念を曲げぬ人物でもあった。その芯の強さは、柔和な外見からは想像もつかない程であったと思う。

趣味は将棋や囲碁、それに読書家である叔父は、多方面にわたり知識を広め、見識を深めていった。
愛読書には文藝春秋や科学雑誌のニュートンなどがあり、納棺の際、お棺にはそれらが一緒に収められた。
以前、私が叔父の家を訪れた折り、時間があれば決まって囲碁や将棋の相手をさせられたものだが、勝敗の結果は言う迄もない。

お通夜の晩、菩提寺の和尚さんのご講話の中で、人はみな、この世に生を受ける以前より、この世での生存期間を決めて生まれてくるのだとのお話があったが、叔父はこの世の生存期間を79年間と定め、そして親(私の祖父母)を選んで生まれてきたのだろう。
別れは悲しいことで、実に寂しい限りだが、それもまた運命である。
私も遅かれ早かれ、何れこの世に生を受ける以前より、決めていた年月を全うし、三途の川を渡る時が必ずやってくるけれども、その時に、「あ~我が人生悔いなし」と胸を張り、しかも安堵感をたたえた穏やかな面持ちで、畳敷きの渡し船の上で、手を振りながらあの世へと渡りたいものだと思っている。
勿論その時には六文銭を忘れないようにしたいものだ……。

因みに、貴重で、しかも非常に為になるご講話を頂戴した和尚さんは、盛岡市大慈寺町にある曹洞宗青龍山祇陀寺(ぎだじ)のご住職様で、お話がとにかく上手で、説得力があり、しかも非常に面白い。
全員が一様に感銘を受けていた。
ご住職様は音楽にも精通されており、ご自身もフルートの奏者として定期コンサートを開いているとのこと。
時間があれば是非とも拝聴したいものだ。

柿のむくろ

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