エッセイコーナー
124.それでも夜は明ける  2015年3月19日

1853年、ソロモン・ノーサップの自伝「Twelve Years a Slave」をもとに、当時のアメリカ南部の奴隷制度の過酷な現実、人種差別の理不尽で不条理な実態を描いた映画『それでも夜は明ける』を、久方ぶりにDVDレンタル店を訪れ、雑用が一段落したので借りて観ることにした。
監督はスティーヴ・マックイーン。主演はノーサップを演ずるキウェテル・イジョフォー。2013年のイギリス・アメリカの歴史ドラマ映画だ。

あらすじ
主人公ノーサップは、アメリカ北部でバイオリニストとして妻子とともに平和に暮らしていた。
ある日、奴隷商人からの甘言に誘われ、騙されてアルコールを勧められ、挙句に薬づけにされ意識を失い、誘拐された。気がついた時には鎖につながれ、奴隷として、当時奴隷制度が未だ残っていた南部に連れて行かれた。
最初に売られた先の農場主は、なかなかの人格者であったが、その農場の白人従業員は人種差別の肯定論者で、知識人であったノーサップを毛嫌いし、木に吊るすなどの虐待行為に及んだ。帰宅した農場主はすぐさまロープを切ってノーサップを助けたが、そのままノーサップを庇うと命の危険を感じた。
その為ノーサップを他の農場に手放すことになった。

ところが、その売られた先の農場主というのが、奴隷に対する扱いが、ムチを使っての残酷な虐待行為が日常茶飯事の残忍な人物だった。
ノーサップは、約12年間もの長きの間、奴隷として過酷極まりない不自由な生活を強いられたが、ブラッド・ピット扮するカナダ人のサミュエル・バス(大工)によって救われた。
そして漸く12年ぶりに家族の元に帰ることが出来たのだった。

2時間14分の放映時間の大半が、自力ではどうしようもない、まるで冤罪の被害者のようなやるせなさと虚しさを感じさせ、奴隷としての過酷で辛く厳しい、リアルで息がつまるようなシーン(目を背きたくなるような)が続いた。
この世の無常を感じさせる映画だった。
この伝記、そしてこの映画は、事実として証明されたものを忠実に再現したとのことだ。
ただ、世界に冠たるハリウッド映画だが、過去に奴隷制度を取り上げたこのての映画が作られたのはこの映画を含め僅か3本のみとのこと。

紳士淑女の国であり超大国のアメリカとして、古傷のように、過去の醜態を晒すことに抵抗があったのかもしれないが、改めて人種差別の不条理や愚昧さを思い知らされ、そして呪わずにはいられなかった。
今では、殆どないと思う奴隷制度だが、残念ながら未だにナイジェリアの子供たちは、現代の奴隷として、過酷な生活に耐え抜いているというのが、実態のようだ。
悲しいこの現実に、決して目を背けずにはいられないが、どうすることも出来ない歯がゆさ、もどかしさを感ぜずにはいられない。





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