エッセイコーナー
531.こどもは社会の宝  2020年10月7日

秋の収穫期を迎え、圃場を見渡せば連日コンバインが稼働し、集荷場では連日のように品位等検査が行われている。
私も検査する側として、この時期は神経をすり減らす日々を送っている。
等級がつけられた新米は一般的に出荷事業者等に渡り、販売事業者等を通して消費者に渡る。
平成16年4月に食糧法が改正され、米の流通は基本的に自由化された。その為、生産者から直接消費者に届くようにもなった。
政府は大凶作などの不測時に備え、政府備蓄米として毎年20万トン程度を買い受け、5年間備蓄することになっている。つまり毎年約100万トンの新米・古米の量を備蓄している訳だが、5年前に国が買い入れた約20万トンの行方が気になるところだが、通常は5年持越米となった段階で飼料用等として売却されるとのことだ。

確かに、必ずやいつかは大凶作の年が来るのは確実であり、それに備えることは非常に重要である。
ただ、米の品種改良はかなり進んでいる。
冷害に強い品種も作られ、昔に比べると遥かに寒さに強く、しかも美味しい米が作られるようになった。
今年は7月から8月にかけ、雨続きで日照不足、比較的気温の上がらない日が続いた。今年は「やや不良」かと個人的には思っていたが、岩手県南に於ける今年の作況指数は102の「やや良」。品種改良の賜物ではないかと私は思っている。
ここ数年来、凶作の年もなく、政府備蓄米も順調にローテーションを組んでいるかと思われる。ただ、その活用方法には些か疑問が残る。

そんな折、今年5月、「政府備蓄米を子ども食堂に無償で交付する制度」を農林水産省が導入することになった。
コロナ禍のもと、経済活動の低迷により困窮する家庭が増えた。今後は更に増えると思われる。
こどもは社会の宝。満足な食事を取ることの出来ない食べ盛り育ち盛りの子どもたちに、「お腹いっぱい食べられるように」との思いから導入された制度だが、聞くところによると8月末時点で、全国で僅か1件のみとのことである。
原因としては手続き等に問題があったようで、今ではかなり解消されたとのこと。
ただ、交付制度の要件には、「炊飯し、食事として提供すること」との条件が付加されているようだ。
本来なら、玄米及び白米を生活困窮者に直接提供すべきだと私は思うのだが、転売等の懸念もあり、なかなか実現は難しいのかもしれない。しかしながら相互扶助の観点から、寛容の心を持ち、自由度の高い支援や対策を打つことが求められているのではないだろうか。

「学校給食用等政府備蓄米交付について」政策統括官付穀物課


フォト短歌「あずまやま」


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