エッセイコーナー
664.ヒトラーの忘れ物「大西洋の壁」  2022年2月10日

毎年3月20日の「国際幸福デー」に、世界の幸福度ランキングの発表がある。
幸福度ランキングは、2012年以来毎年150か国以上を対象に、主観的な幸福度を国連のSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が調査し、国際幸福デーに合わせて発表している。
最新(2021年)の発表では、第1位がフィンランド、第2位デンマーク、第3位スイス、第4位アイスランド、第5位オランダ、第6位ノルウェー、第7位スウェーデンだが、全て欧州諸国が占めている。
因みにアメリカは19位。日本は56位と先進国の中では下の方だ。
フィンランドやデンマーク、ノルウェーやスウェーデンなどの北欧諸国は特に、社会保障が充実してる。
そのことが大きなポイントのようだ。

しかしながらその北欧諸国も過去に悲惨な状況を体験している。
第二次世界大戦の折、ドイツ軍は英米軍の侵攻に備えるべく、大西洋の壁と呼ばれる防衛戦を築いた。
スカンジナビア半島からピレネー山脈に延びる海岸線に、無数の砲台やトーチカ、200万個以上の地雷を埋めた。
その内の150万個の地雷が、デンマークの風光明媚な西海岸に埋められたのである。
第二次世界大戦終盤、ドイツ軍は兵員不足を補う為、新たに編成された国民擲弾兵師団に15歳から18歳の少年を徴兵した。

結果、ドイツ軍が敗退したことにより、ドイツ軍の手によって埋められた地雷の撤去を、ドイツ軍自らがやることになった。兵員の不足もあって新たに編成された国民擲弾兵師団の少年兵も、地雷の撤去にあたることになった。
しかしながら俄に徴収された少年兵は地雷に触ったことすらない。西海岸の砂上を這いつくばり、一個一個手探りで地雷を見つけ、信管を抜き、撤去する。
極めて危険で、あまりに壮絶な撤去作業の為、多くの少年兵が爆風に晒され、犠牲となった。

その史実に基づいて映画化されたのが、2015年12月公開の『ヒトラーの忘れもの』である。
地雷の撤去にあたる少年兵らの壮絶な体験をリアルに表現し、少年兵らに厳しく接していた監視役のラスムスン軍曹(デンマーク軍)と、次第に築き上げられる信頼関係を見事に描いている。
感動的な結末となるものの、戦争の残酷さ、虚しさをとてもリアルに表現した映画である。

先日、その『ヒトラーの忘れ物』のDVDを、空知らぬ雪(雨)の下でじっくりと鑑賞したが、今、東欧に位置する大地が不穏な空気に包まれている。
あのような悲劇が、二度と繰り返されないことをただただ祈るばかりである。


フォト短歌「ミサイル」  


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