エッセイコーナー
297.台北周辺悠々紀行(後編)  2018年3月24日                 初日・2日目(前編)>>

3日目(2018年3月17日)
昨晩泊まったパークタイペイホテル(台北美侖大飯店)(PARK TAIPEI HOTEL)は実に良いホテルだった。
地下鉄MRT大安駅6番出口の右手目前に聳える好立地なホテルだが、それ以上に内容が素晴らしかった。
宿泊した部屋は眺望抜群の17階。料金も実にリーズナブルで、清潔感もあり、気配りも随所にゆき届いており、何より職員の接客対応が実に良かった。経営者の人柄だろうか。
2日間お世話になったが、このホテルを選んだ息子にも感謝したい。

さて、本日の観光目的地だが、台湾に来る第一の目的は、息子の留学先(大学)を見学することだった。
台北から南西に約90km、台湾のシリコンバレーと称される新竹市の国立清華大学を目指した。
移動手段は高速バスを利用。
騒音公害を意識してか、相当な高さのある高架橋の続く中山高速公路を快適に飛ばすこと約1時間弱。この高速バスは15分か20分に1本あるとのことなので、余裕を持って座れた。実に快適なバスであった。

息子は筑波大学を卒業後、同大学大学院の修士課程を経て、現在の国立清華大学の大学院に通っている。
予定では7月頃に卒業の見込みだ。
今回、無理を押しての台湾渡航も、「息子の居る間に」との理由からだった。
大学の広い敷地内を散策しながら、研究棟に立ち寄り、研究室を見学した後、息子の一番の親友だと云う、同じ大学院生の傍ら、教壇に立つドクターのタイ出身の友人を紹介された。

その後昼食を学生食堂で取ろうと向かったが、学生らでごった返していた。暫くしてからまた寄ってみたが、それでも満員御礼状態であった。当日は土曜日と云うこともあって、庭内では色んなイベントがあったらしく、学生のみならずかなりの人だかりであった。
食堂内での食事は諦め、池でも眺めながら庭内で食べようかと学食弁当を注文した。注文した弁当は、さしずめ日本では「焼き肉弁当」とでも云ったところか。学食とあって値段も格安。しかも普通に美味しかった。

その後台北のパークタイペイホテルに戻り、予定では台湾のベニスこと「淡水」の夕陽を拝む筈だったが、広い学園内散策によって足の疲労はピークに達し、断念することと相成った。
その晩の食事は、台湾旅行では欠かせない小籠包の有名店、SOGO復興館の鼎泰豐(ディンタイフォン)を訪れた。
流石人気店とあって30分以上は待たされた。
当店の小籠包は勿論だが、炒飯も旨い。私はエビ炒飯を注文したが、エビのプリプリ感は最高だった。
出ているお腹を更にパンパンに膨らませ、ほろ酔い気分で地下鉄に揺られながらパークタイペイホテルへと向かったが、何とも幸せなひと時であった。それにしてもあのエビのプリプリ感は、岩手に戻った今でも忘れられそうにない。

 17階からの眺望  清潔感のある部屋  中山高速公路  高速バスからの眺め  国立清華大学入り口  学園内の様子
 研究棟入り口 小籠包などの作業風景  茄子のなんとか?  海老炒飯  なんとか麺?  台湾ビール


4日目(2018年3月18日)
本日の目的地は、台北から南南東にバスで揺られること約1時半。新北市万里区の野柳(イエリョウ)地質公園である。当公園は13箇所ある台湾国家風景区の一つに数えられ、奇岩・怪石の並ぶ観光の名所である。
この奇岩は、もともと珊瑚だったものが、長年の風雨や地殻運動、海蝕や風蝕の影響を受け、幾度もの風化を繰り返して出来たものだそうだ。
その奇岩のなかでも特に人気なのが、女王頭(クイーンズヘッド)と云われる貴婦人の横顔を彷彿とさせる奇岩である。
記念撮影の為に常時長蛇の列をなしているので、どこにあるかは直ぐに察しがつく。

また、そのクイーンズヘッドに背を向けながら優しそうな表情で遠くを見つめる一体のブロンズ像が立っている。
1964年3月18日、国立台湾大学の学生らが観光に訪れていた。そのなかの一人が、岩場で写真を撮影していたところ、強風の影響もあってか、運悪く足を滑らせ、海に落ちてしまったそうだ。
その時、近くに居た林添禎という漁師が、海が荒れているにもかかわらず、勇敢にも海に跳び込み、助けようとしたのだそうだ。しかしながら無情にも、2人とも帰らぬ人となったとのことである。
我が身の危険を顧みず、身を挺して人を助けようとする林添禎氏の勇気を、当時の総統であった蒋介石が、林氏の家族を慰問し、哀悼の誠を捧げ、ブロンズ像を建立し、讃えたのだそうだ。
なんとも、実に悲しく切ない話であろうか……。
痛む足に息を吹きかけ、気合いを入れ直しながらも、後ろ髪を引かれる思いで野柳地質公園を後にしたのだった。

楽しみにしていた最終日の夕食にありつこうと、予約済みの馬辣頂級麻辣鴛鴦火鍋(南京店)に向かったが、予定よりも早く着いたので、近くのSOGO(復興館)に入り、カフェラテをすすりながら時間調整を図った。店名は「北海道熊牧場」と云う店だった。

お待ちかねの馬辣頂級麻辣鴛鴦火鍋(南京店)に到着。
台湾のグルメと云えば、やはりなんといっても小籠包と火鍋。「必ず食してみるべし」との助言を、疑い迷うことなく、人気店の馬辣頂級麻辣鴛鴦火鍋に入ってみた。
時間前とあって客足は疎らだったが、時間になると続々と客が吸い込まれてくる。
肉類は勿論のこと、魚介類や野菜類、デザート類やドリンク類の豊富さは推して知るべし。何よりタレの豊富さには驚かされた。数十種類のトッピングが可能で、色んな味を楽しめる。自分の味を探し出すのに30回は店を訪れたい。

ともあれ、食べ放題とあって次から次と色んな食材をオーダーしたはいいが、流石に胃袋も悲鳴を云い始めてきた。
3夜連チャンの食べ過ぎに、普段は文句一つ云わない忠実で丈夫な私の胃袋も、苦痛に歪んでいるかのようだった。
入店時の下見では、最後にハーゲンダッツのアイスと美味そうに並ぶケーキで締めたいと思っていたが、どうやら私には「ベツバラ」はなかったようだ。

明日は帰国の日、そろそろ帰りの準備に取り掛かる必要がある。また、4日間付き合ってくれた息子とも今日でお別れである。寂しいが、明日の授業は欠席できないとのこと。致し方なし。
最終日の宿は、桃園空港の近くを予約してくれていた。内心では、早く新竹市のアパートに戻り、明日の準備に取り掛かりたかっただろうと思うが、息子はホテル迄しっかりと案内してくれ、帰り際にはカンウンターで明日の手配までしっかりとやってくれた。実にありがたいことだ。

 西側対岸の様子  宮廷風の建物  野柳右岸方向の景色  順路を進む  振り返って見る  奇岩怪石
 野柳北東方向の島  奇岩怪石  奇岩怪石  振り返って見る  奇岩怪石 フォト短歌「貴婦人」
 フォト短歌「勇気」  奇岩怪石  カフェラテ  店内の様子  火鍋  火鍋の始まり


5日目(2018年3月19日)
台湾とも今日でお別れである。あっという間の4泊5日だった。
朝食をそそくさと済ませ、桃園空港に急いだ。
4日前に仙台空港から着いた際、帰り便の搭乗口を確認していたので迷うことはなかった。
仙台空港での保安検査は比較的スムーズに行ったこともあり、帰りも然程の問題も無かろうと平然と構えていた。
ところが、桃園空港の保安検査の折、ゲートを潜ると赤い警告ランプが点灯した。
「何事か?」と思っていたら、スマホを胸ポケットに入れたままだった。それに加え、検査員からズボンのベルトを外すように促された。

仙台空港ではそんなことはなかったのだが……。
多少焦りながらも、無事に仙台空港に到着。
日本語で問いかけてくる空港関係者に、妙に親近感と安堵感を覚えたのだった。

今回の台湾観光を振り返ってみると、まず、気候の違いに驚いた。私の住む岩手県南とは2ヶ月程の差があるのではないだろうか。新竹市周辺の水田では既に田植えを済ませていた。我が家の田植えは5月中旬を予定している。
食べ物については、まず果物の種類が豊富であり、また、今迄味わったことのない食材や香辛料の多さに驚かされた。
多少油っ濃さはあるものの、どれもとても美味しくいただけた。
また、バイクの多さに驚かされたが、気候の違いによるものだろう。とても岩手の冬に、バイクに乗る勇気はない。

また、環境の違いや習慣の違いを改めて知ったが、公衆の場所でのガムは禁止だと云うこと。平昌冬季五輪で「もぐもぐ」タイムが話題となったが、ガムの「もぐもぐ」は決して宜しくない。それと、トイレの使用方法についてだが、最近のホテルなどは日本と変わりはないが、基本的にはトイレにトイレットペーパーを流してはいけないとのこと。
用を足した後の紙はゴミ箱に入れるのが基本らしい。
この件については、最終日のホテルは温水洗浄便座ではなく、しかも「紙を流すな」との表示もなかったことから、用を済ませた後、普通に紙を流したところ詰まってしまった。「ありゃりゃ」と思ったが時既に遅し。時間の経過に期待を託すことにした。

それに何と云っても今回の台湾観光で印象深かったのは、息子の成長ぶりだ。
中国語しかり、英語もそうだが、現地の人や英語しか通じない人とも普通に会話をしていた。非常に心強かった。
息子が未だ幼い頃、「これからの時代、国際的に通じる人間にならなければダメだぞ」と云い聞かせていたものだが、そうありたいと努力している息子の姿をみると、逞しさと誇らしさがひしひしと伝わってくるようである。
またそれと同時に、一抹の寂しも覚えたのであった。

フォト短歌「家苞」  
 peach  帰りの機内より  フォト短歌「家苞」  貴婦人と私  研究棟前にて  

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香港九龍游々紀行「シャンカンの旅情にふれて」前編  2019年1月20日 
香港九龍游々紀行「シャンカンの旅情にふれて」後編  2019年1月21日


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