2011年3月11日、忘れもしない東日本大震災から間もなく5年が経つ。その震災の折り、日本中、いや世界中から愛の手が差し伸べられ、真心が届けられた。復旧復興にと現場に足を運び、がれき撤去や側溝の泥揚げに汗する人や、衣食に困りはしないかと沢山の衣服や食料を贈ってくださった方、更には炊き出しにこられた方など、沢山、本当に沢山の善意が届けられた。
そんななかでも、台湾から多くの支援が迅速に届けられたことは、日本中、特に被災地では知らぬ人はいないだろう。なかでも多大な支援を届けた人物のことはあまり知られていないようだ。今年(2016年)1月20日に88歳で亡くなられた方こそが、その人物である。
台湾の海運・航空大手のエバーグリーン・グループ(長栄集団)の張榮發総裁その人である。
張総裁は、少年時代より社会に出て、日系の海運会社で働きながら学び、自習と苦学によって海技士となり、三等航海士、二等航海士、一等航海士、船長等の職務を歴任。
1968年に中古の雑貨船一艘をもって長栄開運を設立し、1984年には史上初の地球一周東西双方向フルコンテナ定期航路を開拓。以降、長栄開運は国際的コンテナ船業界をリードする役割を果たしていく。
1988年、国内航空業界の安全性とサービス向上のため、巨額の資金を投じて台湾初の民間国際航空会社のエバー航空を創立、1991年7月1日に正式に就業した。エバーグリーン・グループは海、空、陸の全方位に発展する多元的国際企業となった。
エバーグリーン・グループの安定的成長と同時に、張総裁は企業の社会的責任を果たすべく、1985年に張榮發基金会を設立した。以降30年にわたり「台湾に関心を寄せ、社会に恩返しをする」慈善、文化、教育等の公益活動を黙々と推進。 医療援助、「張榮交響楽団」創設、「張榮海事博物館」設立、就学助成金の提供、「道徳月刊」の発行、そして国内外の自然災害の被災者支援など、社会に対する恩返しと国家に対する責任に企業家として尽力してきた。
(『本心:張榮發の本音と真心』カバー紹介文より)
上記の『本心:張榮發の本音と真心』紹介文の「国内外の自然災害の被災者支援」にあるように、東日本大震災では張総裁個人として日本円で10億円、また、エバーグリーン・グループ傘下の海運や航空会社に迅速な指示の下、毛布などの緊急支援物資を提供し、また更には、各国政府、国際救助組織の要人や物資を無料で運搬するなど、多大な、いや甚大なる支援にのりだした。
また、日本とは縁が深く、日本語も堪能で、事業創業当時に資金不足に陥った折り、借金の申し出に金融機関が何色を示すなか、日本の商社(丸紅)は保証人なしで多額の資金を用立て、無事に窮地を脱出できたとのことだ。
2012年春の叙勲では、外国人としては珍しい旭日重光章を受章している。
また何よりも特筆すべきは、2011年時点での個人資産は16億米ドル(約1870億円)とされるが、張総裁は生前、この個人資産全てを公益事業に寄附し、子孫には残さないと公言しておられたとか。
企業家としての社会的責任と、社会に対する奉仕の精神として、これ以上の存在、具象はあり得ない程の「善の心」が、このひと言に収斂されているのではないだろうか。
本文より、張総裁の本心の一部(名語録)を紹介
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海外で学びたいと、留学先を色々迷っている息子に、この本を読んだ上で留学先を決めるようにと早速この本を送った。
張総裁の道徳心を形成し、育んだ土壌、環境の下で是非とも学んでほしいと願っている。
最後になりましたが、張総裁、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。 合掌(。-∧-。)
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