エッセイコーナー
816.増産指示や流通規制の発動  2023年5月26日

先日の地元紙に「食料安保強化へ増産や流通規制(有事備え法整備検討・農水省)」との見出しが気になった。
中国では農産物の増産指示などでかなり問題視されている状況だが、はたして日本も同じようになるのだろうか・・・。
「農水省は戦争や凶作などで食料供給が途絶える事態に備え、農業や民間企業に対し、増産指示や流通の規制などを発動出来る法整備の検討に入った」とのことである。

具体的には花卉を栽培する農家に穀物への転作を指示したり、事業者に生産資材の保管を求めたりするとのことだが、それに対して全国農業協同組合中央会の中家徹会長は「工業製品であれば対応出来るが、農業の場合は農地と人という生産基盤があり、非常に難しい。
平時から国内生産増大に向けた体制整備をすべきだ」と訴えたそうだが、全くもってその通りである。
ただでさえ、農家は高齢化やコメ価格の低迷、肥料代等の高騰に伴い、稲作農家全体の約90%以上が赤字経営である。
そんな状況では到底、後を継ぎたいとは思わないだろう。

担い手不足も相俟って、年々離農が進み続けているのが現状である。
仮に、野菜作りの農家に、「戦争が始まりそうだから米を作ってくれ」といきなり云われても、おいそれとは出来るものではない。「机上の空論だ」と云わざるを得ない。
日頃そっぽを向き、無視している奴が、「いじめられっ子にいじめられているから助けてくれ」と云われても・・・。

また、水田活用交付金等の助成制度の変更に伴い、コメの栽培からソバの栽培に転作したものの、水田活用交付金の対象が昨年から見直され、厳格化したことにより、已む無く栽培を諦めざるを得ない状況に追いこまれた農家が相当数出てきている。
これも単なる机上論での政策を決定したからに他ならない。
その場凌ぎで小手先の押し付けによる無意味な政策を決めるのではなく、しっかりと将来を見据え、長い目で、俯瞰的な眼差しを持って政策を決定していただきたいものである。

ただそこにも、どうしても財源論が付き纏う。
「無謬性の原則」に従わざるを得ない官僚の立場は、ある程度致し方ない部分もあるのだろうが、一番の問題は、立法権を司る国権の最高機関・立法府の、国民の代表たる為政者が、財政観、貨幣観を正さない限りいつ迄経っても、農業従事者のみならず一般の国民は救われないのではないだろうか。

795.洞察力の乏しい政策  2023年3月24日


米の魅力 フォト短歌「みのなる畑」  
     
 


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