エッセイコーナー
635.今年最後のコメ検査  2021年10月27日

昨日、私にとっては今年最後のコメ検査を無事に終えることが出来た。
今年も何事もなく役目を果たすことが出来、また、昨日は全量一等米と有終の美を飾り、安堵の念で一杯である。
ピーク時にはとてもじっくりと鑑賞する余裕などなかったが、検査終盤に入り、検査袋数も少なくなるとある程度余裕ができてくる。勿論、等級の基準をしっかりと見極めることが先決だが、余裕があるとカルトンに並ぶ一粒一粒をじっくりと鑑賞出来る。今年の新米は比較的粒揃いで食味値も高いようだ。

澄んだあめ色が陽の光に照らされ、キラキラと輝いて見える。その輝きはみな生産者の汗の結晶であろう。
一粒百業と云って、多くの工程を経て漸く一粒のコメが出来上がる。
雪解けの頃に種籾を水に浸し、積算温度で120度以上になる迄じっくりと時間をかけ、発芽の準備に入る。
種蒔き機に入れる前にある程度水分を飛ばし、種籾が均等に苗箱に並ぶように準備をする。
蒔き終わった苗箱を育苗器に移し、3日程かけて発芽を促す。発芽したのを確認し、今度は苗箱をビニールハウスに移動し、田植え迄じっくりと育てなければならない。

一般的には水管理が楽になるようプール式で管理するが、我が家では毎朝水掛け(現在は苗を購入)をしていた。
ハウス内の温度調整に注意を払う。温度が高過ぎても低過ぎてもだめ。なかなか難しいのである。
約3週間程ハウスで育て、いよいよ田植え作業である。
その間にも水田周辺の草刈りや用水路の清掃などやることは満載だ。
無事に田植えが終わった後も、除草作業やカメムシ被害軽減の為に草刈りを欠かすことは出来ない。

稲がすくすくと育ち、稲神が宿ることを祈りながら天を仰ぎ、そしていよいよ秋の収穫期を迎える。
良寛禅師『奇話』の一文にあるように、「稲のぼなる声」が聞こえる頃に稲刈りが始まる。
そんな多くの工程、種種雑多な作業を経ることによって漸く一粒一粒のコメに輝きを増し、JAいわて平泉の「金色の風」「ひとめぼれ」など、令和3年度産新米として全国に出荷される。
コロナ禍で沈んだ心に、生産者の汗と泪の結晶が元氣を与えてくれるのではないだろうか。


フォト短歌「2021今年最後のコメ検査」  



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