エッセイコーナー
780.過ちて改めざるは是過と謂う  2023年2月10日

今から14年程前の日記を読み返してみると、間違いに気がついた。
「最高の景気対策とは」とのタイトルで、2009年(平成21年)5月11日に記載したものだ。

最高の景気対策とは
老いてきた両親が「なんだか最近の日本は住み辛くなってきたよな~」とよく呟くようになった。私も同感である。
いや、私や両親だけじゃないだろう。老後の事や未来を考えるにあたり「不安」の二文字が脳裏をよぎるようになった。年金問題や雇用問題、経営の問題などなど、どれをとっても不安の文字が先行するのである。
何故そうなったのだろうか。
雇用に関して云えば、嘗て終身雇用や年功序列といった定年迄の生活が保障されていた時代は、今ほど不安を抱えていただろうか。

また、年金に至っては60歳で定年を迎えたとしても、年金の受給によって定年後の生活が保障されていた。
少なくとも今よりは遥かに、生活に対する不安がなく気持ちに「ゆとり」があった。不安が少なければ少ない程、当然消費も増え、景気だって良くなる筈である。
しかしながら、今の日本はどうだろうか。莫大な個人の預貯金(一部の富裕層だけという説もあるが)や、大企業による過剰なキャッシュフローがありながら、一向に景気は回復しそうにない。

何故なら、消費するよりも「蓄えること」を優先するからである。
では何故蓄えることを優先するのかと云えば、将来への不安があるからであり、子供達の将来を考えて蓄えに回すからである。
その根本原因である「将来不安」を先ず解消しなければ、いくら給料を貰おうとも、いくら事業に成功しようとも消費には回らないのである。
その原因となるものは色々あるだろう。行き過ぎた市場原理主義や、個人による過剰な自力救済思考など色々あるだろうが、個々的にみて悪いことではないが、「過剰」が問題なのではないだろうか。

それでは将来の不安を取り除くのにはいったいどうすれば良いのだろうか。結論から云うと、それは社会保障の充実にあると私は思っている。
「老後の生活が保障されている」と云うことになれば、何もそんなに預金する必要もなければ、子供の将来だってそれほど不安でもなくなる筈である。
気持ちにゆとりさえあれば、今迄蓄えてきた貯蓄を消費に回すであろうし、仕事だってギスギスして相手を蹴落としてまでもやる必要がなくなるだろう。
ただ、競争の原理を否定するつもりは毛頭ない。
競争の原理によって進歩も生まれるからである。余裕を持って仕事が出来ると云う意味だ。

社会保障について世界との比較を見てみると、社会保障給付費の対GDP比で見ると日本は17.7%。対象29ヶ国中23番目と社会保障のレベルが低水準にある。(2009年当時のデータ)
この社会保障レベルが高いのはヨーロッパ諸国だ。
「ゆりかごから墓場まで」とまでは云わないまでも、老後の不安を解消できるぐらいの社会保障レベルを上げるべきではないだろうか。

その財源となるのはやはり消費税である。
消費税引き上げは一見消費の低迷を生むのでは、との見方もあるものの、「将来や、老後を担保する」という意味ならば吝かではないと思うのである。

日本は今その転換期にきているのではないだろうか。米国型の自力救済思考的発想からヨーロッパ型の相互扶助的発想を取り入れる転換期に来ているのではないだろうか。
その足かせとなっている日米安全保障条約の問題もあるだろうが、日本は日本である。
独立した主権国家として、そろそろ日本独自の路線を見出してもよいのではないだろうか・・・。



上記14年前の日記中の●部分●について、当時は真剣にそう信じていた。
消費税を上げる理由として、政府は「社会保障の為に」と主張していた。そのことを信じて「清き一票」を投じたものだが、今になってみると、全くないとは云わないまでも、「騙された」としかいいようがない。
直間比率の是正もあり、1989年に最初の消費税(3%)が導入された当時は未だ景気も良かったことから、然程でもなかったが、デフレ下での増税は更なる景気減退に拍車をかけることになる。
8年後の1997年4月には5%に、2014年4月には8%、2019年10月には現行の10%にそれぞれ引き上げられた。
その結果、その都度景気が後退している。

2008年当時の映像⇓を今になって改めて観てみると、エコノミストの紺谷典子さんの論説は正しかったことに改めて気付かされる。



当時は、理解は出来るものの、極論だとして、私の脳内の思考回路から寒天やところてんのように天突きで押し出していた。今改めて当時の映像『博士も知らないニッポンのウラ(2008年3月15日放送)』を思い出しながら観ると、当時の見識の無さ、甘さを改めて痛感したのである。
財政観や貨幣観を正した上で、大胆な財政出動による景気対策を行い、一刻も早くデフレを脱却し、理想的な経済の好循環を実現すべきである。
その為には大きな政府の下で、減税政策を推し進め、節度を持った規制緩和等による円滑な経済活動が展開出来るよう法律や制度を見直すべきである。それが、我々世代が孫子の代に対する責任であり、責務であると私は確信している。


フォト短歌「走りすぐ」


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