エッセイコーナー
31.父の背中  2011年1月31日    

私の親戚にも、やはり短歌の好きな方がいる。地元の短歌結社に所属していて、毎週地元(岩手日日新聞)誌の短歌コーナーに作品が掲載されている。私も彼からの誘いにより、地元の短歌結社「游の会」に所属することになった。
これまでに詠んだ短歌は5000首以上にのぼるとのこと。 年齢は私よりもかなり上だが、とても親しみやすい人柄で、恐縮だが、呼ぶ時はちゃん付けで呼ばさせて頂いている。
本名は圭一郎なので、「けいちゃん」と呼んでいる。 今朝の地元誌の短歌コーナーに、掲載された「けいちゃん」の短歌をご紹介したい。

口数の少なき馴染みの理髪師が「我は老いた」とポツリと呟く

私はこの歌を読んで深く感銘を受けた。
老いを感じさせる切なさが、このみそひと文字に溢れんばかりに広がっている。
その光景が、目の前にパァッと広がってくるのである。
得てして腕の良い職人には口数が少ない人物が多いものだ。その理髪師という職人の重みが、尚更に老いる事の切なさや、否応なしに訪れるであろう時の移ろいを感じさせられるのである。

そんな事を思いながら、
浮かんだ詩(?)に短歌を添え、フォト詩歌「父の背中」を作成してみた。

陸奥の冬は厳しい
連日連夜真冬日が続いている
川は凍り山は白銀一色となり
軒下を見上げれば
つららがその勢い(するどさ)を増すばかりだ
父や母も既に喜寿を過ぎ
その老躯には
この冬は辛かろう
「早く春はこないか」と呟くその姿が
妙に哀切を呼んでならない
『口数の少なき父の背中には「屈強」の文字影をひそめり 』

親爺の背中 一関短歌会「游の会」

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