エッセイコーナー
419.凱旋門  2019年10月19日

新緑のきはみに凱旋門となる日比谷通りに芽を噴くいちやう
日本現代詩歌文学館の篠弘館長が、1999年刊行の歌集『凱旋門』のタイトルとなった一首。
新緑の頃、日比谷通りの銀杏を詠んだ一首だろう。日比谷公園には「首かけイチョウ」と云う樹齢推定400年を超える銀杏の巨木があるそうだ。
その老木を中心として、5月の中旬だろうか、銀杏群が五月晴れの下、新緑をなびかせている。さながらその様子は凱旋門の様である。

篠弘館長は当時、百科事典を編纂する大手出版社の一流編集人として最前線に立つ企業人だった。
糊の効いた真白なワイシャツにネクタイをビシッと締め、シワのないスリーピースに身を包みながら右手には原稿の詰まった黒革のアタッシュケースを持ち、颯爽と銀杏並木を歩いたに違いない。

「男は閾を跨げば7人の敵あり」一流になればなるほど敵を持つと云われる。眼光鋭く、企業戦士として、責任と誇り、企業人としての気概を持ち颯爽と歩く、その凛々しい姿が目に浮かぶようだ。
日本現代詩歌文学館では、毎年この時期に、篠弘館長の短歌実作講座が開かれている。私も楽しみにしていたが、今年は残念ながら開かれなかった。
なにぶんにもご高齢の身、況してや文芸界の重鎮。多事多端の身であろうことは容易に推測がつく。
どうか御身体にはくれぐれも留意され、益々のご活躍、ご健勝を心よりご祈念申し上げたい。

本日、その短歌実作講座を受講されている方たちが見受けられる奥州市民らが集い、第14回奥州市民芸術文化祭・短歌大会(選者、八重嶋勲前岩手県歌人協会会長)が奥州市民活動支援センターで行われた。
その最優秀賞(奥州市長賞)の名誉を手中に収めたのは胆沢町の遠藤カオルさん。
  渇水の湖底あらはに村の跡生家のあたり萱草の咲く
続く優秀賞(奥州市議会議長賞)に、歌会(游の会)仲間の佐藤怡當(前・岩手県歌人協会副会長)先生が受賞された。
  敗戦の夏に聞きたる蝉の声今日も聞こゆるかの日のままに

因みに、遠藤カオルさんは今年の岩手日報随筆賞でも最優秀賞を受賞している。


フォト短歌「朝霧」  

※「首かけイチョウ」は、以前の生育場所は現在の日比谷交差点付近だったそうだが、日比谷通りの拡幅工事の為に伐採されそうになったそうだ。本多静六さんと云う方が「私の首をかけよう」と強く伐採を止めるよう働きかけたそうだ。
それに行政は応えて、現在の場所に移植したとのことだ。それが「首かけイチョウ」の由来とのこと。


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