エッセイコーナー
705.第61回平泉芭蕉祭全国俳句大会  2022年6月29日

本日、天台宗別格本山 毛越寺を会場に第61回平泉芭蕉祭全国俳句大会が開催された。
選者は澤俳句会主宰の小澤實先生を初め、白濱一羊、小畑柚流、小林輝子、渡辺誠一郎、照井翠先生ら6名。
芭蕉供養会の後、午前10時10分から開会式が始まった。

開会式では、千葉力男平泉観光協会会長の開会宣言を皮切りに、大会会長である青木幸保平泉町長、毛越寺の千葉慶信執事長の挨拶があり、児童・生徒らの表彰式が行われた。
その後、当日句の吟詠や昼食休憩を挟み、「芭蕉の風景へ」と題して小澤實先生の講演が午後1時から始まった。

今日は6月29日、今から11年前の2011年、平泉の世界遺産登録が決まった日でもあり、地元平泉にとっては記念すべき日である。
今回会場となった毛越寺には、正門をくぐり、大泉が池を右手に見ながら本堂に進むと、右側に毛越寺伽藍復原図が見えてくる。その直ぐ手前に、「夏草や兵どもが夢の跡」と刻まれた芭蕉の真筆による句碑が、濃緑に包まれてひっそりと建っている。
小澤實先生曰く、「夏草や兵どもが夢の跡」は名句の中でも、三大名句の一句であると仰っていた。

講演のなかで、俳聖芭蕉の功績として特筆すべきは、
1、自分を詠むこと
2、取り合わせの重要性
3、瞬間を詠むこと
等について解説され、また、歌枕の奥にあるアミニズムにも触れ、奥の細道の最終目的地は伊勢である等々、『奥の細道』についての解説には興味をそそられた。

大会の結果は以下の通り

<大会長賞> 当日句特選一席:群れ咲いてあやめ浄土となりにけり 齋藤雅博(盛岡市)

<特選入選作品>(以下は応募句のみ掲載)

小澤實先生選
天賞:阿弖流爲の国や畦火の狼煙めく     岩谷 塵外(秋田市)
地賞:遠足の子ら静まりぬ光堂        京極 久也(大崎市)
人賞:鬼房の国の残雪ほとぼれり       水戸 勇喜(宮城県)

白濱一羊先生選
天賞:一つ一つは淋しがり屋の葱坊主     宇留田 敬子(松阪市)
地賞:香水を一滴落す柩かな         舘 健一郎(常陸太田市)
人賞:遠足の子ら静まりぬ光堂        京極 久也(大崎市)

小畑柚流先生選
天賞:満開という静かさや古代蓮       加藤 健一郎(青森市)
地賞:巫女舞の果てたる舞台飛花落花     小野寺 束子(一関市)
人賞:囀を飼ひ馴らしたる老樹かな      齋藤 雅博(盛岡市)

小林輝子先生選
天賞:古の花の束稲山今に猶         野村 ときえ(一関市)
地賞:遠足の子ら静まりぬ光堂        京極 久也(大崎市)
人賞:蕗の芽の廃寺に一つ基衡忌       岩渕 洋子(平泉町)

渡辺誠一郎先生選
天賞:空高く本家分家の鯉のぼり       鈴木 勝也(大崎市)
地賞:畑まで稚(やや)見せに来る麦の秋  羽藤 焼石(奥州市)
人賞:ぼうたんや帯解くごとく崩れ落つ   石川 喜美子(気仙沼市)

照井翠先生選
天賞:千年も色を継ぎ足す蓮かな       門間 としゑ(大崎市)
地賞:花筏国をはなるゝ国のあり       阿部 靖(奥州市)
人賞:千年の閂はずし夏来る         雪田 樹里(青森市)

ここ平泉では、芭蕉の句碑以外にも、西行法師の歌碑、山口青邨や加藤楸邨の句碑など多くの文人たちとの関わり、詩歌などの文芸と親しむ環境に恵まれている。
隣接する一関市には、島崎藤村や井上ひさし、阿佐田哲也や三好京三、及川和男、俳諧では加藤楸邨の著作や遺品などを展示する公設民営の文学館「いちのせき文学の蔵」があり、文人たちとの関わりが深い土地柄である。
いちのせき文学の蔵では今年6月、機関誌『ふみくら6号』を発刊。その表紙を飾ったのが、前出の毛越寺伽藍復原図を描いた故・白石隆一画伯(一関市千厩町出身)の曹以(そい)の画である。

尚、毛越寺では現在、3百種3万株の菖蒲(アヤメ)が見事に花開いている。
その様子は後日、改めてYoutubeにupしたい。
岩手県南を訪れる際には、中尊寺に参拝し、毛越寺のアヤメを観賞した後、東に約10km、猊鼻渓の手前約3kmのところに「みちのくあじさい園」がある。15ヘクタールの杉林に囲まれた紫陽花がこれから見頃を迎える。


フォト短歌「淡き蕾」  

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