エッセイコーナー
354.秀衡塗  2019年1月28日

先日の香港渡航の折、息子の嫁さんのご両親には本当にお世話になった。
すっかりご厚意に甘えてしまったが、帰国して、はて、このままでいいのだろうかと思いつつ、ついつい日時を重ねてしまった。
やはり、このままでは申し訳ない。何等かの御礼をすべき。と思い、はてさてそのお返しを何にすべきか、と色々考えあぐねていた。
口に入る物が細書真っ先に脳裏に浮かんだが、口に入ってしまえばそれっきり、後は出てしまうだけで跡形もなくなる。況してや輸送の問題もある。では他に何かないかと思案していると、「そうだ、記念に残る物がいい」と思い立った。
出来れば地元の物がいい。

そうこう考えを巡らせていると、閃いた。あるある、あるではないか。岩手を代表する工芸品「秀衡塗」があるではないか。直ぐ様、中尊寺近くの翁知屋に向かった。
店内には金箔をあしらった職人の手仕事による丹念な仕上がりの漆器作品がズラって並べられてあった。
どれを見ても美しいものばかり。リサイクルショップなどで見掛けるプラスチック製の物では失礼だ。本物を選びたい。勿論、予算は限られており、何でもいいと云う訳にもいかない。身の丈に合ったもので、比較的喜ばれそうな品物はないものかと、色々物色していると、店番をしていた翁知屋のおおかみさんらしき人から話しかけられた。
「こればどうですか?」とガラス戸棚にあるセット物を見せられた。

結局、おかみさんのおススメ品を購入することに決めた。
末広がりのどっしりとした高台とふっくらとした優しい形のお椀、それに秀衡塗の箸と箸受けが付いた3点もの2対が収められているりセットものに決めることにした。
加飾には有職菱紋と呼ばれる菱型の金箔を施し、縁起が良いとされる草花が描かれている逸品だ。中でも大ぶりなお椀を選ぶことにした。

秀衡塗は平安末期、北方の王者「藤原秀衡公」が京より職人を招来し、当時ふんだんに算出したとされる金を用い、器を作らせたのが起源だと云われている。
以来脈々と受け継がれてきた技法と文化であり、一椀の器に凝縮されているようであった。
因みに、平成28年の三重県志摩市で開催されたG7サミットの折、各国の首脳への贈呈品として翁知屋の「秀衡塗・栃ぐいのみ」が用いられている。

フォト短歌「秀衡塗」  

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動画の序盤、器に漆を塗る行程が紹介されているが、よく観ると、その女性職人は我が家の分家、そのまた分家の長男の嫁さんだった。
貴重な伝統工芸をいついつまでも大切にし、後世にしっかりと伝えていっていただきたいものだ。
尚、翁知屋には漆塗り工房「Kuras」があり、漆塗りの体験ができるとのこと。
私も機会があったら是非体験してみたい。出来ることなら、手作りの万年筆に秀衡塗を施し、One in the worldの一品に仕上げてみたいと思っている。

余談
小腹が空いたので何かないかと事務所内の戸棚を開けてみると、すっかり忘れていたが香港からのお土産が一つ出てきた。帰国の前日、立ち寄ったお菓子屋さんから買ったものだ。
普通のクッキー(合桃曲奇)のようだが、早速開けてパクリと頬張ると、実に美味い。
予想を超える美味さだった。勿論味覚については個人差があるので一概に云えないが・・・。

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