エッセイコーナー
362.命の美容室  2019年3月2日

命の美容室 ~水害を生き延びて~
と云うタイトルの本が、コールサック社から刊行された。
著者は千葉貞子(78)さん。私が所属する短歌同好会「游の会」のメンバーの一人。
短歌、俳句、随筆が綴られた珠玉の1冊である。
本の序盤には、千葉さんの子供の頃の苦しく辛い体験が生々しく綴られている。

1948年(昭和23年)9月16日、アイオン台風の発生により、関東以北に甚大な洪水被害をもたらした。
特に北上川中流域の岩手県一関市では、磐井川の増水により、多くの家屋が水没。5百数十名の尊い命が奪われるなど、甚大な被害をもたらした。
著者の千葉さんもその一人である。

当時千葉さんは小学3年生、8歳だったそうだ。磐井川沿いにあった自宅が、磐井川の氾濫によって家屋もろとも流され、濁流にのみ込まれて家屋は倒壊。その倒壊によりばらばらになった木片にしがみつきながら、38kmも下流に流されたそうだ。九死に一生を得、命からがら宮城県登米市で救出されたとのことである。
その時の辛く苦しい体験が生々しく綴られている。
日本は災害大国、毎年どこか此処かで何某かの災害を被っている。
このような実体験を聞き、見ることによって、自然の猛威、大自然の驚異を実感するとともに、畏敬の念を忘れることなく、自然と向き合うことが肝要であろうと、改めて思いしらされたのだった。


フォト短歌「命の美容師」  
                 アイオン台風前年のカスリン台風では、千葉さんは筏の上で1日を過ごしたそうだ。

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