エッセイコーナー
840.云易遣苦「云うは易く遣らされるは苦し」  2023年8月1日

「云うは易く 行うは難し」と云う格言はよく聞くが、「遣らされるは苦し」は聞いたことがない。私の造語である。
言易行難「言うは易く 行うは難し」はつまり、口で云うのは簡単だが実行するのは難しいと云う意味だが、前述した「遣らされる」側はそれ以上に大変なのである。
そんな光景はどこでもみかけるが、自分も含め、知らず知らずのうちについついやっているのではないだろうか。

先日、卒寿の母が古くなった障子を破り、新しいのに張替えて欲しいと藪から棒に云われた。
確かに、かなり以前に張り替えた障子であり、所々破けている。
その都度修復し、継ぎ足した箇所が気になるのは確かである。
とは云え、時間もないことからついつい手を出さずにいた。
母曰く、「古くてみっともないので所々破っておいたから、張り替えてちょうだい」それに加えて「身体があまり動かないので、破るのだけで精一杯だった」とのこと・・・。

いやはや、こっちにだって都合と云うものがある。
あれもやり、これもやり、やることばかり、やることだらけなのである。
破る前に一言相談してほしかったのだが・・・。
しかしながら幸か不幸か、父の納骨の為に妹が一時帰省することになり、早速妹に頼むことにした。
以前父がすってんころりんと障子の桟ごと破損した箇所もある。
初盆を控え、建具屋さんに修理を依頼しようかとも思ったが、それも父の思い出の一つ、遺構として残そうかと思った次第である。

勿論そのままではあまりにも格好が悪いので、そのことを短歌に詠み、揮毫したものに拙絵を添えて張ることにした。
ついつい私も、「云易遣苦」を知らず知らずのうちに執行していたようである。 
人にものを頼む時は、先ず以て相手に対する気遣いを持ち、「頼んだら兎にも角にも任せること」が肝要だと、自問自答し、改めて自戒したのであった。


フォト短歌「父の手形」  

桟ごと破損した当時の写真など>>


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