エッセイコーナー
697.子連れのニホンカモシカ  2022年6月4日

先日、畑から自宅に戻ろうと軽トラに乗り、左カーブを過ぎった時のことだった。
前方からニホンカモシカがトボトボとこちらに向かって歩いてきたのだ。それも子連れである。
ブレーキを目一杯に踏み、急停車。
直ぐ様、胸ポケットからスマホを取り出し、撮影しようとしたが時既に遅し。一瞬にして茂みに消えてしまった。
シャッターチャンスを逃してしまったが、何時かまた逢えることを祈りつつその場を後にしたのだった。

それから暫くして、一昨日の朝のこと。散歩がてらに畑の様子を見に行った時のことだった。
杉林を挟んで何やら灰色の動くものが確認できた。
直ぐ様何であるかは見当がついた。ニホンカモシカである。ところが、一頭のみならず小さな個体も動いているではないか。先日遭遇したニホンカモシカの母子であろう。
気づかれないようにと、杉の木に寄りかかり、姿勢を低くした。

私は散歩の時は常にカメラを肩にかけている。
徐に、音を立てずに慎重にカメラをケースから取り出し、ここぞとばかりにシャッターを切った。
ところが、その微かなシャッター音に反応したのか、こちらをじいっと見ている。
尤も、既に気づいていたに違いないが、私を危険人物とは判断していなかったのではないだろうか。
素知らぬ素振りで、梅の葉や桑の葉っぱを毟り美味しそうに頬張っていた。

以前にも子連れのカモシカを見たことがあるが、その時は結構な距離だった。
今回は実にラッキーである。
暫くしてからカモシカの歩いた跡を確認しに行ってみると、マルチで囲んだキュウリの苗などを荒らさないように避けて通っていた。
まるで母シカが子シカに対して、人間との共存の術を教えているかのように思えてならない。
人間同士が啀み合い、殺し合っている現実に、カモシカの母子はどう思っているのだろうか・・・。


フォト短歌「カモシカ短歌」


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