エッセイコーナー
570.国民の命  2021年2月13日

古本屋に立ち寄り、手に取った科学雑誌のページを捲ると、「ビックバンの理論的研究と系外惑星の発見」と云う見出しに興味がそそられた。
2019年ノーベル物理学賞受賞者のジェームズ・ピープルス(プリンストン大学)名誉教授やジュネーブ大学のミシェル・マイヨール教授やディディエ・ケロー教授のお三方の記事である。
なかでもジェームズ博士の記事には、「宇宙は今から約138億年前に誕生した。誕生した直後の宇宙は超高温・超高密度の小さな火の玉のようなものだったと考えられる。その後、宇宙が膨張するにつれ、次第に温度が下がり、その過程で星や銀河、銀河団などの構造が形成されていった。これがビッグバン宇宙論がえがく、宇宙のシナリオだ。
と結論づけている。

ただこのことについては、私なりに疑問を持っている。はたして本当にそうなのだろうか。
宇宙は今から約138億年前に誕生したとのことだが、約138億年以前は、はたして何があったのだろうか。その辺りがいまいちスッキリしない。
一言で、「無」或いは「虚無」とでも明記、表現するのであろうか。
適切な言葉が見つからないが、一般的に云うと宇宙空間は無限である。果てのない無限空間の中で我々は限りある人生を送っている、いや、それとも限りのない人生を送っているのかもしれない。
勿論、単なる思弁であると云われればそれまでだが、無限空間のもとでは時間の概念すらないのではないだろうか。

そんなことから、「宇宙は今から約138億年前に誕生した」などと結論付けるのはいかがなものかと私は思うのである。もっともそのこと自体、単なる思弁であると云えるのかもしれない。
ともあれ、我々人類、いや人類のみならず寿命を持つ生命体が、無限空間のなかで命の営みを繰り返している訳だが、その体系的なあり様は、「自然の営み」だけに止まらない。
長い年月の間には、戦争などによって吸収や併合、離合や集散などが繰り返されるであろうが、国家と云う政治的組織が存在する限り、時間軸と云う概念のもとでは半永久的に存続する。
勿論それは地球が壊滅しないことが条件となる。

半永久的に続く国家を支える経済もまた、半永久的に続くと云えるのではないだろうか。
その意味を理解した上で、国家経済の循環を鑑み、俯瞰する必要があると私は思っている。
半永久的に続く無限の時間軸のなかで、経済が営まれている訳だが、我々個人の資産や財産は無限ではない。土地を所有していても手放せば他人の名義になり、資産は減る。
また、いくらお金があっても、使ってしまえばなくなってしまう。そうなった場合、どうにかしてお金を稼がなければならない。今ある所持品をYahooオークションやメルカリなどで売ってお金に換えたり、労力を提供して賃金を得たり、つまり生活する上では対価を稼ぐ必要がある。これは個人のみならず、家庭や企業などの組織も同じである。
何故なら、自らお金を生み出すことが出来ないからだ。

紙幣を勝手に印刷すれば通貨偽造罪(刑法第148条第1項)に問われ、「無期懲役または3年以上の有期懲役」に処される。しかしながら、国(政府)は違う。自ら自国建ての通貨を発行できる自国通貨発行権を持っている。
つまり無限空間のなかで、極端に云えば無限に、半永久的に通貨を発行できるのである。
とは云え、闇雲に乱発し、ジャブジャブになっては物価が高騰し大変な状況になる。所謂ハイパーインフレになる可能性も否定できない。そうならない為にも、内生的貨幣供給論を踏まえた上で、金融政策や財政政策によってある程度の調整が必要となる。
MMT(現代貨幣理論)で指摘するインフレ率2%を目途に経済政策を行う必要がある。

我が日本はバブル崩壊後、緊縮財政によってもたらされたデフレ状態が長らく続き、もはや経済大国から転落し、落ちぶれつつある。コロナ禍のみならず、徹底した見直し、発想の転換が必要ではないだろうか。
本来なら、国の中枢に居座る政治家や官僚、御用学者しかり、これまでとってきた緊縮財政政策の過誤を認め、現代貨幣理論の理解に努め、国民を救っていただきたいと思うのだが、残念ながらそれも無理であろうから、一刻も早く、地上波の番組でMMT論者らと破綻論者らの激論を交わしていただきたい。

財務省のウエブサイトには、日本の国家財政に於いて、歳出全体の約三分の一を公債金収入に依存していることについて、「将来世代へ負担をつけ回している」と述べている。
しかしながらまた一方で、財務省が作成した個人向け国債の広告動画や資料に、「それは未来への贈り物 個人向け国債を購入してみよう」と云うメッセージも配信している。
どちらともつかないマクロ経済の矛盾点に一石を投じ、経国済民、経世済民、我々弱い立場の国民の生活、そして命をしっかりと守っていただきたいものである。


フォト短歌「かり」

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