エッセイコーナー
199.絵本一冊、衣類一点50円  2016年7月14日

仕事の都合で久しぶりに北上市を訪れた。
ちょうど小腹が空いたことから、久方ぶりに、北上市街を一望しながら食事をしようかと、眺望抜群の「さん食亭」に行ってみることにした。着いたのは11時半少し前だったが、既に駐車場はかなり車が止まっていた。
一人で訪れる時には必ずと云っていいほど、西側の窓際のカウンター席を選ぶ。「この車の数では無理かな」と半分諦めながら入店すると、幸いなことに空いていた。
早速案内係の店員さんに席を取ってもらい、20数種類の料理が並ぶバイキングコーナーにそそくさと急いだ。

最近はあまり大食をしなくなったが、新鮮な夏野菜をふんだんに使った美味しい手料理に、箸は進み気味である。
生憎の雨とあって北上市街の眺望はいま一つだったが、満腹感を味わい、十二分に堪能できた。
店に入った時は、席取りや食べることしか頭になかったので全く気付かなかったが、帰り際、エントランスの張り紙に目が止まった。
その奥には古本や衣類などが陳列してあり、張り紙には、絵本一冊、衣類一点50円で販売するとあった。
文面をよく見ると、その売上全てを熊本地震の被災地に寄付すると書いてあった。

当「さん食亭」のオーナー(高橋静雄さん)は、知る人ぞ知る慈善家であり、東日本大震災の折は神的支援に乗り出し、奔走された方である。
その被災地への支援活動をとおして、全国から集ったボランティアや、全国の真心が届けられた実態を目にして、「いつか恩返しをしたい」と思っていたに違いない。
熊本地震からちょうど3ヶ月。現地では殆ど手付かずのところも未だあるとのことで、復旧、復興が遅れているようだ。何処ぞの首長さんの公私混同問題で連日マスコミは賑わっており、もっと被災地の窮状を報道すべだと思っていたものだが、決して忘れぬようにしてもらいたいものだ。

「さん食亭」のエントランスに陳列してある絵本や衣類は、東日本大震災の折、高橋さんと一緒になって支援した仲間たちの真心が沢山詰まっているように感じる。
そして未だ、熊本地震を忘れぬようにと、改めて考えさせられた次第である。


フォト短歌「支援」    



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