エッセイコーナー
451.第18回(令和2年)岩手県南歌人クラブ新春短歌大会  2020年1月27日

昨日、岩手県奥州市の市民活動支援センター(メイプル地下)を会場に、岩手県南短歌クラブ主催の新春短歌大会が行われた。選者は岩手県歌人クラブ幹事の鷹嘴真智子先生。
胆江地区を中心に、北上市や一関市から39首の出詠があり、例年どおり出席者による出詠歌5首の互選もあるなか、粛々と、しかも賑やかに行われた。
大会の進行内容は鷹嘴真智子先生による講評の他に、今回から初めて取り入れた抜き打ちによる意見交換形式によって進められた。
我々地元の歌会(游の会)では前もって1首1首調べてから歌会に臨むことができるが、咄嗟の返答はなかなか難しいものがある。しかしながら緊張しつつも、楽しい勉強会となった。

結果(鷹嘴真智子先生選)は、特選3首、秀逸5首、入選10首、それに互選が1位から5位まで。
出席者の中で何と云っても注目を集めたのは地元水沢市の高橋市次郎さん、御年100才である。
ー 生かされて善悪(さが)を説かれて一世紀生命尊き楽しく生くる - (入選)
高橋市次郎さん以外には絶対に詠めない短歌である。
もし私が詠むとするならば、後39年間生きなければならない。とても無理そうである・・・。
耳は遠いとのことだが、話す内容はもとより、声に張りがあって背筋もピンと伸び、矍鑠としておられる。
兎にも角にも、凄いの一語に尽きる。
来年は是非とも、101才の詠草を目にしたい。

鷹嘴 真智子先生選
特選:枯れ芝の庭に落ちたる黄の榠樝(くわりん)油の浮きて入り日を反す  菊池 トキ子(江刺)
   月出づる前の明りのほのかにて南天の実ことさら紅し         羽藤 堯(胆沢)
   腕の中おさな乗りだし止まらないお母さんの手どこまでも広い     小野 優子(水沢)
秀逸:はらわたから絞り出す声蛮カラの応援を背にライナーが飛ぶ      佐藤 政勝(一関)
   節電を促す祖母が仏壇の部屋に毎晩明かり灯して           小野寺 迅翔(水沢)
   亡母のことつぶさに聞かず茫々とわれ三代の御代に存ふ        阿部 スミ子(胆沢)
   半世紀前に別れし好きな女初詣での中独り歩めり           門脇 酔文(胆沢)
   宛名のみ書きし賀状の残りおり新年待たず友は旅立つ         菊池 洋子(江刺)
互選1位:病室の窓をひらきて新しき年吹く風を母に届けぬ          遠藤 カオル(胆沢)

因みに、私は今年も辛うじて入選を果たすことができた。
「叔父逝く」と掠れし声の知らせあり追い抜き去りぬ秋の夕風

下部に掲載のフォト短歌の一つに、蛮カラを詠んだ佐藤政勝(一関)さんの一首をお借りして、私の高校時代の写真とコラボレートさせていただいた。

尚、来る4月24日(金)世界遺産の天台宗東北大本山「中尊寺」を会場に第41回中尊寺西行祭短歌大会が行われる。
今大会より本堂の裏手に完成した光勝院が会場となる。檜の無垢材を敷いた温かみのある180畳の大広間で行われる。
昨年迄は寒い中での短歌大会だったが、今年は暖房の効いた総檜造りの落ち着いた空間で行われる。
開催要項は『角川短歌2月号』に掲載されている。


フォト短歌「蛮カラ」 フォト短歌「夕風」



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