エッセイコーナー
650.年末雑感「昔の常識は今の非常識」  2021年12月30日

先日の地方紙に、結婚及び出産に関するデータが載っていた。
2015年の国勢調査によるものだが、それによると40歳~44歳時の未婚率の全国平均をみると、男性が29.0%、女性で19.0%。古いデータなので、現在コロナ禍により、更に未婚率は増えていると考えられる。
少子化対策を有効的に進めるには、先ずはこの婚姻率を上げることが先決だ。
婚姻率が上がらない理由としては、「自由な時間がなくなる」「人との生活が煩わしい」などの理由があるとのことだが、それよりも、男性側にとって一番の理由は、結婚後の、生活面の心配によるところが大きいのではないだろうか。

新自由主義掲揚のもと、派遣や非正規と云った労働環境の変転により、将来に対する不安を抱かざるを得ない若者たちが増えている。
以前は中流階級社会を目指し、生活の安定を重視した終身雇用が一般的だった。企業倒産などがなければ定年まで雇用され、務められる正社員雇用が当たり前だった。
ところが、グローバル化を掲げた新自由主義の台頭もあって、成果主義へと企業の経営スタイルが変わり、リストラや解雇が容易な非正規労働者が増える結果を招いた。そこにも行き過ぎた資本主義の瑕疵が見え隠れしている。

そのことによって、正社員と非正規社員の格差が拡大され、「勝ち組、負け組」「富めるものと貧するもの」の二極化が進んだ。
これは小さな政府を目指した政治的決断による失策であったと云っても過言ではないが、その解消にはやはり、政治の決断が鍵となる。
バブル崩壊以来、耳障りの良い「財政健全化」を唱え、30年間に渡り、日本は緊縮財政を「よし」としてきた。その結果デフレ基調が続き、GDPの伸び率は他の先進諸国に比較するとドンジリ状態である。
世界に於けるGDPの割合を年代別に比較しても明らかだ。
1993年当時、日本は17.5%を占め、アメリカは26.4%、日本を除くアジアは5.6%だったものが、27年後の2020年では、日本は6.0%を占め、アメリカは25.0%、日本を除くアジアは25.0%と日本の陰が益々薄くなっている。

財政健全化政策の柱は、プライマリーバランス(PB)の黒字化だが、PBを黒字化させる為には税金を上げる必要がある。その結果、国民が貧しくなることは自明の理である。
それは兎も角として、何度も云うように、通貨発行権を持たない民間レベルの発想に他ならない。
金本位制当時に於ける、兌換紙幣の概念の呪縛から抜け出せない思慮の産物であり、「昔の常識である」と云わざるを得ない。
現在は管理通貨制度のもとで、通貨の発行量を通貨当局が調節し、物価の安定や経済成長、雇用の改善や国際収支の安定などが図られている。そのことから、国債の発行など、積極的な財政活動により、経済の活性化が図られている。
そのことによって、民間の経済は刺激され、更なる景気の好循環が生まれ、更には、積極財政により社会保障の充実を図ることにより、将来への不安は解消される。その結果、婚姻率は上がり、少子化の解消にも繋がる。

赤字国債の更なる発行は、「孫子の代への借金だ・・・」このまま発行すれば「国は破綻する・・・」などの緊縮財政派の政治家や官僚、経済学者らは取り憑かれたように云うが、そもそも管理通貨制度のもとで、自国建て通貨を発行する我国では、財務省の公式見解にもあるように破綻することはないし、孫子の代に先送りする借金でもない。
寧ろ誤った解釈や、過去の理論によって強いられた政策のおかげで、犠牲になった、或いはこれからなる大勢の国民に対する大罪であると云わざるを得ない。
そのことからも、財政法の見直しは必須であり、主要人物のひと言や提言によって世の中は大きく左右されることから、そのひと言や提言に責任を持たせる上でも、国家賠償法の見直しも視野に置くべきではないだろうか。



フォト短歌「白磁の世界」  
       42:05 あたりからの解説を参照  


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