エッセイコーナー
878.第6回現代歌人の集いin日本現代詩歌文学館  2023年11月19日

昨日、岩手県北上市の日本現代詩歌文学館を会場に、「第6回現代歌人の集い」が行われた。
応募歌は全国から637首。 
初めに各選者特選賞の発表があり、第6回現代歌人の集い賞、日本現代詩歌文学館館長賞、現代歌人協会理事長賞の表彰があった。
最高賞の「第6回現代歌人の集い賞」には本木朱実さんが選ばれた。

◆上位三賞(特別賞)
<第6回現代歌人の集い賞>
 石材店の見本の墓石に文字は無し鏡のごとく映る我が顔              本木朱実(宮城県)
<日本現代詩歌文学館館長賞>
 「きょう」という拗音打てず「けふ」にする老父(ちち)のLINEのはじめの一歩   大平真理子(神奈川県)
<現代歌人協会理事長賞>
 「あける」のみ記されているキャップなり命を守る飲料水の            杉山太郎(神奈川県)

選者賞(特選のみ記載)
・大松達知 選 
 「きょう」という拗音打てず「けふ」にする老父(ちち)のLINEのはじめの一歩   大平真理子(神奈川県)
・工藤玲音 選
 夫の手よりすべり落ちたる錠剤を卓にもぐりて一粒ひろう             佐々木絹江(岩手県)
・高木佳子 選
 頸長く大きく白い鳥を指す実習生は越南(べとなむ)の娘(こ)ら         熊本吉雄(宮城県)
・千葉聡 選
 野口シカはひとり聞きけむ今生の心のなべて声となる蝉              横田千加子(香川県)
・富田睦子 選
 石材店の見本の墓石に文字は無し鏡のごとく映る我が顔              本木朱実(宮城県)

知人の入選者では、富田睦子選の秀逸賞に岩手県奥州市の遠藤カオルさんが選ばれ、同じく富田睦子選の入選には、同じ奥州市の羽藤堯さんが選ばれた。

表彰に続いて選者による座談会が始まった。
司会進行は選者の高木佳子さんが務め、円滑に進められた。
入選歌の講評を含め、作品のポイント、重要点などを順次話されたが、「命を感じる歌」「自分を含め、匂いの濃い歌」「感動など、自分の心の動きを捉えた(態度の文芸)」「言葉の悉力と量?」「映像と言語化」等々、今後の歌作に非常に参考になる内容だった。

また、歌を詠むにあたり、「スランプに陥ったときはどうしていますか?」との高木さんの質問に、大松氏は「高野公彦先生の歌集を読む」とのこと。すると自然に短歌を詠みたくなるのだそうだ。
また、富田さんは、兎にも角にも詠むこと。後で読み直してみて、駄作作品は捨てるとのこと。なるほど・・・。

その後休憩を挟み、坂井修一(国立大学図書館協会会長、東京大学副学長)先生の「馬場あき子のみちのく」と題して記念講演が始まった。
馬場あき子さんと云えば鬼の研究で知られるが、特に興味深かったのが「悪路王」の話しだった。
ウクライナやパレスチナ、第二次世界大戦では沖縄や広島、長崎等の無念を想起しながら、馬場あき子さんがみちのくで感じられたことを偲びつつ、坂井先生の講演に耳を傾けた。

今から10世紀程前、慎ましくも平和に暮らしていた我ら父祖の地で、侵攻、侵略の許し難い蛮行に涙を呑んだ。
千年経った今でも、ご先祖の恨み辛みが心底のどこかに内在しているのかもしれない。
その怨恨がふとした時に、鬼となって現れるのかもしれない。
但し、余談だが、「鬼・・・」と云う言葉はあるが、「鬼じじい」と云う言葉はない・・・。

余談はさておき、昨日の「短歌の集い」をはじめ、一昨日は地元平泉町の学習交流施設エピカを会場に、平泉町芸術文化協会主催による「俳句の集い」が行われた。
後学の為に私も出席したが、短詩形文学にどっぷりと浸かった二日間であった。
因みに、エピカ(Epica)とは、壮大な歴史を指す「叙事詩」の意味がある。
一句 <翁忌の週間前の叙事詩かな>
平泉と縁の深い芭蕉忌は10月12日。今年の新暦では11月24日が翁忌となるかと・・・。

All right then


短歌の集い2023 フォト短歌「姪の真心」

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