エッセイコーナー
23.タックス・オン・タックス  2010年7月9日

相続税の課税対象となる年金に対して、更に所得税として課税することがタックス・オン・タックスつまり二重課税に当たるか否かが争点となっていた裁判で、遂に最高裁判決で国側が敗訴となる二重課税を認めた。
長崎市の女性(49歳)が、一審の長崎地裁に於いて二重課税であると勝訴した後、二審の福岡高裁では、課税は妥当なものだと一審の判決を覆す結果を出したのに対し、不当な判決であると最高裁に上告し、今回の最終判決で勝訴となり、二重課税が認められたものである。

この度の、二重課税として課税対象となったものが、今回問題となった通常の生命保険契約の特約として付加された年金に対し、雑所得とみなされ所得税が課税され、これが二重課税であると認められたものである。
しかし、二重課税として問題になっているのはこれだけではない。
例えば、所得税と法人税、ガソリン税と消費税、ガソリン税の中には揮発油税+地方道路税などがあり、それに対する消費税加算となると二重課税どころではない。他には、他国間の税の問題として、居住地国課税や源泉地国課税による違いの二重課税の問題も争点の一つである。

これらのように、二重に税金を払っている。いや、知らず知らずのうちに半強制的に払わされていると言ったほうが正しいのかも知れない。そして、決して少なくはない。
以前「世に問う」のコーナーでも、何度か採り上げたガソリン税と消費税などは未だに納得のいかない二重課税の最たる問題の一つである。
今回の最高裁判決による結果から、このガソリン税など、二重課税であると問題視されているものについても、問題意識が再認識され、物議を醸してもおかしくはない。

3日後に迫った今回の参院選での最大の争点となっているのが、やはりこの税金問題(消費税)だが、前出の二重課税の疑いや問題に対して、徹底的に精査し議論してもらいたいものだ。
そのような問題点を厳粛に受け止め、早急に解決した上で、国民の前で、消費税増税論議を正々堂々と超党派による議論を交わしてもらいたい。
選挙前の各党のマニフェストや選挙演説を聞いていると、増税反対意見ばかりである。確かに、大企業減税と抱き合わせの消費税増税では、国民の大半は納得するものではないと思うが、将来への希望、将来の生活への不安を解消する為の社会保障費として、その限定税に限って行うということであれば、「決して吝かではない」ということではないだろうか。

野党の多くは、その消費税を先延ばしにすることのみ強調しているけれども、そんな事では、何時になっても充実した社会保障の実現などあり得ない。更に、増税実行の時期についての議論では、時期尚早であるとの意見が多いようだが、ベストタイミングなどある筈はないのではあるまいか。
「景気が回復してから」と言うけれども、例え景気が回復し安定したとしても、当然増税を叫ぶことによって景気の悪化を招くだろう。

その時になればなったで、当然反対されることは火を見るより明らかである。ずれ込めばずれ込む程、「将来への不安が募るばかりだ」と言っても過言ではないと思うのだが。
勿論、ただ闇雲に一気に増税されてはたまったものではない。
生活する上で、最低限必要な物、例えば食料品や電気・ガス・水道料などの生活必需品の特別措置はいうまでもないが、低所得世帯に対するセーフティーネットなどをしっかり構築した上で、一刻も早く党派を超えた真剣な議論を交わしてもらいたいと思っている。
我々国民も、目先の事にばかり囚われずに、真剣に、そして将来を見据えながら、長期的なビジョンを明確にした上で投票所に足を運んでもらいたい。

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