エッセイコーナー
76.燃ゆるとき   2014年3月22日

昨日の春分の日に、お墓掃除とお参りに行こうと予定していたのだったが、生憎の季節外れの大雪の為、今日に持ち越すことになった。
墓地や遊歩道には未だ雪がしっかりと残っており、ところどころ凍結していたり、足元を気にしながらの今日の墓参りだった。母曰く、「60数年らい、こんな雪の中でのお墓掃除は記憶にないなぁ~」とのこと。
暑さ寒さも彼岸まで、そろそろ春が実感できる日射しを待望する今日この頃だ。

そんななか、空いた時間に映画でも鑑賞しようかと、DVDを借りることになった。
久しぶりに邦画でも観ようかと棚を見て回ったが、はてさて、いったい何を借りようか色々迷ってしまう。
本来、私が主に観たい映画といえば、文学的な作品や芸術性の高いもの、或いは深く考えさせられる作品などよりも、単なる娯楽として楽しめる映画を好んで観る。しかも、殆どが洋画ばかりなので、邦画の内容は殆ど知らないというのが真相だ。

ただ、中井貴一主演の映画だけは、東野圭吾氏の推理小説が映画化された「麒麟の翼」や、家長として家族を守ることの責任の重さや辛さ、歯がゆさなどが共鳴し、とても涙なくして観られなかった「壬生義士伝」での演技力に敬意を表し、今回も中井貴一主演の映画「燃ゆるとき」を借りることに決めた。
この物語は、「金融腐食列島」や、シバレンこと柴田錬三郎(故)さんが著した「大将」のモデルにもなり、再建の神様と云われた坪内寿夫(故)さんをモデルにした、「太陽を、つかむ男」の著者として知られる高杉良さんの作品である。
実在する大手食品会社がそのモデルである。

おおまかなあらすじは、カップ麺を主力商品として、「資本主義の頂点たるアメリカをラーメンで制す」との思いを心に秘め、アメリカに進出した大手食品会社が、経営不審やM&Aなどの危機に直面した折り、「企業は人なり」を基本理念に、誠実で、しかも何事にも真摯に取り組むなどの日本的企業経営の理念を頑なに守り、その危機を乗り越えるといった社会派ドラマである。

主人公の中井貴一氏が、セクハラの濡れ衣を着せられ、止む無く日本に帰国せざるを得なくなった。
帰国後、責任を感じて辞表を提出した折り、津川雅彦さん扮する大手食品会社社長の、「人材は何よりの宝だ」と、提出された辞表を、中井貴一氏の左胸ポケットに優しく入れ返し、決して受け取ろうとはしなかった場面には、流石にこらえきれなくなったものだが、創業者である元会長(故人)の人柄が伺え、真の経営者は「かくありたい」とつくづく思う素晴らしいシーンであった。

最後に流れる小田和正さんが歌う主題歌「そして今も」の、心に響く旋律によって更に感動が深まる物語だったが、そのモデルとなった会社は、マルちゃんや「赤いきつねと緑のたぬき」でおなじみの東洋水産株式会社である。
人に冷たい、合理主義を重んじ、儲け主義のみに走ろうとする利害関係の呪縛から逃れられないアメリカ経済に象徴される、昨今の行き過ぎた市場主義経済やグローバル経済に対する反発や問いかけでもあったように私は思う。


赤いきつね
YouTubeはTV版、渡辺謙主演の「壬生義士伝」

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