エッセイコーナー
80.トップの采配   2014年6月14日

一巡目の草刈り作業が漸く終わった。
昨年来の膝の不調により、一番しんどい傾斜地の草刈りは諦めることにした。
その傾斜地の草刈りは大変だということで、アジサイ法面工法と勝手に名付け、将来的にアジサイで埋め尽くせば草を刈る必要がないとの目論見から、10数年前に数百本のアジサイを植えた。
当初は、誤ってアジサイを刈らぬようにと慎重に草を刈ったものだが、雑草が勢い着くにつれ、一緒にアジサイも刈ってしまうなどして今は殆ど残っていない状況だ。体力の衰えや膝の悪化により、断念せざるを得ない現実に直面している。
そんなこともあって、一巡目の草刈り作業は以前より4日ほど早く終わった。良いことなのか否かを問う以前に、過酷な傾斜地の草刈り作業が少しでも減ったことは、素直に喜ぶべきことだと思っている。

過酷と言えば、
先日とある番組で、木村大作氏(当時カメラマン)がゲスト出演し、過去の撮影秘話などを話していたが、非常に興味深いエピソードが沢山あった。
その中でも、黒澤明監督の『八甲田山』の撮影では、凍えるような酷寒の中、木村氏自らが十和田湖に胸まで浸かり、撮影したシーンがあったとのことだった。
早速そのシーンを確認すべく、DVDのレンタルショップに走った。
そんなエピソードを知った上で観る映画は、とても迫力があり、リアル感が半端ではなかった。
映画の内容については、日露戦争当時(1902年)、ロシアとの開戦を睨み、雪中での訓練が必要となった日本軍が、訓練場所と選んだのが冬の八甲田山だった。

北大路欣也扮する、青森歩兵第5連隊神田大尉率いる31大隊総勢210名は、猛吹雪の中、強行に進軍した結果次から次と冬山の犠牲となった。生還したのは210名中僅か11名だった。
一方、徳島大尉(高倉健)率いる弘前第31連隊は一人の死者を出すこと無く、無事に八甲田山を踏破した。
成功させた最大の要因は、まず現地の人間を道案内人として雇ったことだが、その案内人の一人に、秋吉久美子さん扮する滝口さわがいた。
その彼女との別れ際、「頭右(かしらみぎ)」の号令で一斉に感謝を込めた敬礼のシーンがあったが、実に印象的だった。

この映画で、再認識(確認)されたことが2点程ある。
その一つが、「自然を侮ってはいけない」ということ。
大自然の猛威や脅威、予測不可能な事態が必ずあるということを肝に銘ずべきだ。
準備万端、あらゆるリスクをシュミレートし、それらに備える準備を完璧にこなしたとしても、前述の事態が起こり得るということを理解していなければならない。

安易な気持ちで冬山に挑む登山家が、毎年のように山岳警備隊のお世話になるニュースが飛び込んでくる。二次災害に繋がりかねない危険で人騒がせな行為だ。よく考えて行動してもらいたいものだ。
視界の効く明るい昼日中に、右側の歩道を歩いていて、後ろから来る車に跳ねられたとしたら、運が悪かったと諦め(つかないか)もつくかもしれない。
夜間の真っ暗いなかを黒い服装で歩いていて、後方から来る車に跳ねられた場合、螢光服を着用して歩いていればこんな事にはならなかったと後悔するだろう。危険を承知で挑む気概を、人は「勇気」というかもしれないが、「無茶」だと言った方が正しいと私は思う。
他人に迷惑をかけてはいけないし、決して自然を侮ってはいけない。

また、二つ目は、「トップに立つ者の采配如何によって運命が分かれる」ということ。
北大路欣也扮する神田大尉が、最後まで陣頭指揮をとっていたとすれば、あのような犠牲者を出さずに済んだかもしれない。
本来であれば、神田大尉が指揮をとる筈だったものが、雪中行軍調査の為の随員として同行した三國連太郎扮する山田少佐の横槍により、あのような結果を招くことになった。
どんな企業、どのような組織であっても、トップの影響力は実に大きい。勿論国とて同じだ。
裁量の乏しい頭(かしら)、危険な方針や政策により、誤った方向へと導く上司やトップを持つことは、「災難」としか言いようがないが、同じ後悔をするならば、尊敬する人物の下で死ねるなら、「本望だ」といえるのではないだろうか。




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