エッセイコーナー
66.即断即決  2014年1月17日

今の季節、私は毎朝布団の中から横目でちらりと、部屋のガラス越しに見える蔵の屋根を、一番最初に確認するようにしている。
何故ならば、この時期、夜中にどれだけの降雪があったかを確認するためだ。
それによって雪掻きをするか否かの判断を下すのだが、今朝は、昨夜の帰宅途中からこんこんと降り募っていた事もあり、ある程度の予測はついていた。

その為に普段より目覚まし時計を早目にセットしていた。 その耳触りの悪いベルを合図に、何時ものように、寝ぼけ眼で土蔵の屋根の様子を窺ったところ、予想通りの積雪だった。
とその時、何時もと違う光景が薄っすらと目に入ってきたのである。
我が家の土蔵は孟宗竹林に囲まれており、その竹やぶの隙間から、木漏れ日のように淡い朱赤色の光が煌々と射しているではないか。実に絶景だった。その時ふと、枕元にカメラを置いていなかった事を後悔した。

徐に起き上がり、家を飛び出してカメラを構える姿を一瞬思い描いたのだったが、日頃の日課である「朝の御勤め」を欠かす訳にはいかない。
眠い目を擦りながらもそそくさと洗面所に向かい、歯磨きと洗顔を済ませ、はやる気持ちを抑えながらもお仏様用のお茶とお水を用意し、神棚は既に御袋が用意していたので二礼二拍手一礼の参拝を済ませ、仏間に移動し感謝の念を持って朝の挨拶を済ませた。 その間10分足らずだろうか、何時もよりも長く感じたのだった。

その後、そそくさと脇目も振らずにカメラを肩に、「よしっ」とばかりに気合いを入れて家を飛び出した。
ところが、ところがである。 起き際に見たまっ白のキャンバスに、鮮明に映し出された淡い朱赤色の文様が、既にそこには残っていなかったのだ。
シャッターチャンスを逃してしまった。
大自然の妙は、ほんの一瞬、姿を現したと思えばまた一瞬にして消え去ってしまう。
何事も、何でもそうだが、「思い立ったら吉日」である。即断即決、即行を肝に銘じたい。

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