エッセイコーナー
637.秋の小塚棚田  2021年11月5日

岩手県一関市舞川(旧・相川地区)に、日経新聞が選ぶ棚田百選の第7位に選ばれた金山棚田がある。
その金山棚田から東に約2km。みちのくあじさい園入口の看板を左手に、主要地方道(一関大東線)を横断して東方向に進むと、間もなく右手に「小塚棚田」が見えてくる。
左側には昭和の中頃迄使われていた釜や臼杵などのレトロ感溢れる生活用品や、今では使われなくなった懐かしの農機具などを展示する古民具ハウスがある。
そこから小塚棚田を見下ろし、前方に目を向けると2つの小高い山嶺が見える。
右側に見えるのが、標高350mの霊峰「烏兎ヶ森」である。
近景に小塚棚田、遠景に烏兎ヶ森などの牟礼を拝する明媚な風光を堪能できるのではなだろうか。

昭和22年8月、「さきの旅路今また過ぎてくらぶればゆとりのあるが見えてうれしき」と御製を詠まれた昭和天皇東北巡幸の折、電車の中で「あの山は何と云う名前ですか?」と側近に尋ねるられたそうだが、側近は咄嗟に「ヒーロー山」と答えたのだそうだ。
と云うのも、当時、「ヒーロー」と云う名のお酒があったそうだが、その看板が山の中腹に建てられていたそうだ。
正式名称はヒーロー山ではなく「烏兎ヶ森」である。
その烏兎ヶ森の頂上部に巨巌があり、岩の上部に馬の蹄のような跡がある。
地元では平安末期、源義経公が一ノ谷の合戦に赴く折、藤原秀衡公が義経公の武運を祈り贈ったとされる駿馬「太夫黒」の蹄の跡だ、との云い伝えが残っている。
勿論単なる伝説に過ぎないが、古のロマンがふつふつと込み上げてくるようである。

この小塚棚田は、日本百景に数えられてはいないが、春には鏡田となって烏兎ヶ森の全景を映し、秋にはたわたわに実った稲が黄金色に染まり、小風に揺られながらカラカラと、刈り入れ時を知らせるかのようなボナリ声が聞こえる。
日本百景に負けず劣らず、日本の古き良き原風景がそこにはしっかりと残っているのである。
余談だが、当地の舞川市民センターでは、一昨日の11月3日から9日(火)迄の7日間、地区民による文化祭が行われている。私も予てよりの念願だった、自作の陶芸作品に短歌を書き込んだ菓子皿を展示することが出来た。
「でき」は推して知るべしだが、愚作とは云え初の作品とあって愛着のあるひとしなである。

馬の尻尾  2021年2月6日更新


フォト短歌「小塚棚田」 自作のお菓子皿 フォト短歌「烏兎ヶ森」

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