エッセイコーナー
206.甘と辛  2016年9月19日


絶品スイーツを堪能しに、TeaRoom 「風 Fu~」を訪れた。
プロレス団体ドラゴンゲートのYAMATO選手と門口ですれ違って以来、約1ヶ月半ぶりの来店となる。
今回も、何にしようかと散々迷った挙句、やはりどうしてもカボチャのタルトに心が傾くのであった。
注文して間もなく、目の前に並ぶケーキセットはいつもながら実にアーティスティックであり、スプーンやフォークを入れるのに躊躇する。「ずっとそのまま観ていたい」と云う衝動にかられる。

暫しの間、心の葛藤が続いたものの、心を鬼にしてスプーンを入れ、徐ろに口に頬張ると、口いっぱいに芳醇なパンプキンの香りが広がる。しっとりとしたタルトの滑らかさに舌が潤う。
次は右斜め上の切子細工のグラスに目が行った。パンナコッタである。
スプーンを入れると、グラスの底にはブルーベリージャムであろうか、コントラストが実に見事であった。
ひとすくい口に頬張ってみた。なんとも云えない絶妙なその味わいに、私の頬が否応無しに綻ぶのを感じる。その瞬間の表情を是非とも鏡で見てみたいものだ。還暦を2年後に控えるオッサンの綻ぶ顔など見てもしょうがないが、ともあれ幸福感は満面の笑みの中に間違いなく漂っていた筈である。ママさん特製のタージリンとアールグレーがミックスされたアイスティーで喉を潤し、身も心も蕩けそうになる午後のひと時であった。


私はあまりテレビを観ない方だが、土曜日の夕方に放送される吉田類の「居酒屋放浪記」は時々観るようにしている。
当初は、「単なる酔っぱらいの番組か」と興味も薄かったが、今では楽しみの一つでもある。
一期一会、見知らぬ人たちとの酒席での出会いや、居酒屋の持つ独特な雰囲気、画面から、焼き鳥を焼く炭と秘伝のたれの入り混じった独特の匂い、秋刀魚を焼く香ばしい匂いがこうこうと伝わってくる。実に美味そうに杯を手にする吉田類さんの様子を観ているだけでも、ほろ酔い気分になれるのである。
「羨ましい」と云った嫉妬感や、短簡な好奇心ではない。

必然と云う、見えない力に導かれ、飛び込み先の居酒屋との耽溺なる融合、吉田類さんの人柄が滲み出る和みの空気感が、そうさせるのではないだろうか。
辺鄙な片田舎に住み、帰宅時間も夜中の11時近くになることから、なかなか居酒屋に立ち寄る機会に恵まれない私だが、吉田類さんの目と耳と口と手、そして嗅覚をつかさどる鼻を通して、その内幕に触れるだけでも幸福なひと時を過ごすことができるのである。


フォト短歌「タージリン」 パンナコッタ フォト短歌「吉田類」  





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