エッセイコーナー
265.熊に注意!!  2017年10月5日

Facebookをスマホでまさぐっていると、私が営むトレーニングジムのメンバーであり、農産物検査員仲間でもある千葉君の写真に目が釘付けとなった。
熊が足の裏を曝け出して仰向けになっている写真だった。
早速本人に確認してみると、イノシシの捕獲用に仕掛けられた罠に掛かったものに、たまたま犬の散歩途中に出くわしたとのことだった。

昨今、あちらこちらで熊の出没情報が飛び交っている。
つい先日も岩手県雫石で熊に襲われたとのニュースが流れていた。また、昨日のニュースでは、北海道釧路管内白糠町茶路基線の山林で、熊に襲われて死亡すると云った悲しい事故があった。
8月の例年にない長雨の影響か、どんぐりなど、熊の餌になる木の実が不作なのかもしれない。
冬眠前のこれから、特に警戒が必要だ。

私は渓流釣りや山菜、きのこ取りなどアウトドアを趣味とするが、過去に熊とは4・5回遭遇している。
なかでも特に危なかったのは、息子が未だ中学生の頃、渓流釣りに行った時のこと。
目的地に着き、車の外で息子が釣り支度をしていた時のことだった。
釣り場のポイントを確認しようと、私は渓流沿いの杣道を、渓相やポイントを確認しようとてくてくと歩いていった。
荒れた小道なので視界が十分に効くわけではない。況してやブッシュに覆われ、前方の様子が薄っすらと確認できるほどであった。
車から離れ、100m程来ただろうか。

狭い杣道は右側に緩やかに曲がっており、前方の様子はブッシュで遮られ、視界はそれ程効く訳ではないが、目を凝らしながらも前に進むと、前方から黒い物体がゆっくりと近づいてくるのが分かった。
咄嗟に、何であるかは想像がついた。熊だ!!
その距離約30m程だったろうか。
私は渓流釣りや山菜、きのこ採りなど山に入る際には必ず、何時熊と戦ってもいいように武装することにしている。武装と云っても杖代わりの長い鉄製の棒と、ナタなどを持って入山することにしているが、その時に限って、車の中に置いてきてしまった。
さて、・・・困った。

後方には車の外で釣りの準備をしている息子がいる。
絶対に熊を後方にやる訳にはいかない。
風上の熊はこちらに気づいていないようであり、地面の匂いをクンクンと嗅ぎながら、首を左右に振り振りこちらに近づいてくる。その距離20m程に迫っただろうか。
一瞬、「逃げようか」と脳裏を過ぎったが、獣は逃げるものを追いかける習性があることを思い出した。まさしく四面楚歌の状況であった。
その時だった。

私は咄嗟に、両の手を斜め頭上に高々と持ち上げた。そして両の目をぱぁっと見開きながら熊を睨みつけ、大声で奇声を発した。「ウォー、ウォー、ウォー」と・・・。
昔取った杵柄。高校時代に応援団リーダーとして発声練習に明け暮れたのが功を奏したようだ。
腹の底から絞り出すような太く凄みのある声だったと思う。
死を覚悟した断末魔の声であったのかもしれない。
その時の形相は、鬼か、般若か、阿修羅の様相を呈していたのではないだろうか。
その威嚇に、熊は漸く気づいたようだった。熊にしてみても人間を怖いと思う筈だ。一目散に逃げて行った。


フォト短歌「熊」  


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